概要
2024年パリオリンピック(パリオリンピック2024)におけるセーリング競技は、水中フォイルを用いた新種目が導入され、大きな変革期を迎えた。その中でも新種目として採用された「フォーミュラカイト」は、最高時速40ノット(約70〜80km/h)を超えるオリンピック史上最速の夏季スポーツとして大きな注目を集めた。
「I feel the need… the need for speed.」
— Maverick, Top Gun
まさにこの言葉を体現するような、極限のスリル asymmetry と圧倒的なスピードがマルセイユの海で展開されたのである。
開催地とコンディション
フランスの首都パリから南へ約660km離れた地中海沿岸のマルセイユが舞台である。マルセイユの海は気まぐれであり、今大会では非常に軽い風(ライトウインド)とフラットな水面という極限のコンディション下でのレースが中心となった。風待ちによるレースのキャンセルが相次ぐなど、選手にとって極めてタフで戦略的なゲームが求められた。
フォーマットと出場選手
フォーミュラカイトの男女クラスは、同一の共通機材を使用し、風速に応じて9、11、15、21または23平方メートルのカイトから選択する。予選のオープニングシリーズを経て、上位選手がメダルシリーズへと進出する。決勝は累積得点方式ではなく、先に3勝(予選順位によるアドバンテージポイントを含む)を挙げた選手が金メダルを獲得する、テニスのマッチポイントのような刺激的なノックアウト方式が採用された。女子クラスの予選フリートには、かつてフリースタイル界で10度の世界王者に輝き絶対的女王として君臨したジセラ・プリード(ジセラ・プリドー)が、完全に対極にあるレーシング種目へと転向してオリンピックの舞台に立ったことも、カイトコミュニティに大きな興奮をもたらした。
ハイライト・名勝負
男子クラスでは、これまでの人生で一度も主要レガッタで優勝したことがなかったオーストリアのバレンティン・ボントゥスがいきなり五輪王者に輝くという大番狂わせを演じた。スロベニアのトニ・ボディチェクに3つのマッチポイントを握られる絶体絶命の状況から、3レース連続トップフィニッシュで大逆転勝利を収めた。ダウンウインドで30ノットを記録し、フィニッシュ時には弓矢を引くポーズ(bow and arrow claim)で歓喜した。敗れたVodicekはビーチで新王者の前にひざまずき、最大の敬意を表する美しいスポーツマンシップを見せた。また決勝では、イタリアのリカルド・ピアノーシが自身のカイトでBontusの風を意図的にブロックしようとするシビアな戦術的駆け引きも展開された。
女子クラスでは機材選択が運命を分けた。微風でキャンセルが相次ぐ中、ライバルたちが最大の21mカイトで挑むなか、イギリスのエリー・オールドリッジはあえて15mカイトを選択し、見事に金メダルを掴み取った。地元フランスの期待を背負う大本命ロリアン・ノローは重要なタックでフォイルから落水する痛恨のミスを犯し、Aldridgeの先行を許した。さらに、かつてスライダーやキッカーを攻めるパークスタイル(Kite Park League)やフリースタイルのトップライダーとして名を馳せ、そこからレーシングへと電撃転向したオランダのアネルース・ラメルツ(Annelous Lammerts)が、見事な適応力で銅メダルを獲得するというドラマチックな快挙を成し遂げた。また、6度の世界王者に輝くアメリカのダニエラ・モロズも決勝で戦ったが、他艇を回避する義務(keep clear)を果たせなかったとしてペナルティを受ける波乱があった。
大会の詳細結果を表示(ネタバレ注意)
- 男子フォーミュラカイト
- 金メダル: バレンティン・ボントゥス(オーストリア)
- 銀メダル: トニ・ボディチェク(スロベニア)
- 銅メダル: マックス・メイダー(シンガポール)
- 4位: リカルド・ピアノーシ(イタリア)
- 女子フォーミュラカイト
- 金メダル: エリー・オールドリッジ(イギリス)
- 銀メダル: ロリアン・ノロー(フランス)
- 銅メダル: アネルース・ラメルツ(オランダ)
- 4位: ダニエラ・モロズ(アメリカ)
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