カイトボーダーと重力との戦いは、常に機材の重量との戦いでもあった。「どうすればもっと風の恩恵を受けられるか」。その答えを求めたOcean Rodeoの創業者でありCEOのリチャード・マイヤーズコウは、共同創業者であり化学者のピーター・ベラン博士に「我々がこの業界全体のためにできる最大の貢献とは何か」と問いかけた。その答えこそが「もっと軽いカイトを作ること」だった。この小さな会話が、後にカイトボードやウイングスポーツ業界の常識を根底から覆す、魔法の黄金素材「ALUULA(アルーラ)」誕生の引き金となる。
ALUULAの圧倒的な性能とプレミアムな価値を証明するように、現在トップブランドはフラッグシップの最上位モデルにのみ、独自のシリーズ名を冠して展開している。
・Duotone:『D-Lab』シリーズ(Evo D-Lab、Rebel D-Labなど)
・Ocean Rodeo:『A-Series』『HL-Series』(Rise A-Seriesなど)
・Core Kites:『Pro』シリーズ(XR Proなど)
・North Kiteboarding:『Ultra』シリーズ(独自の次世代軽量素材『N-Weave』等と並行し、最高峰のビッグエア機としてOrbit Ultraに投入)
・Slingshot:『NXT』シリーズ(Code NXTなど)
・Naish:『N-Vision』シリーズ(Pivot N-Visionなど)
・Cabrinha:『Apex』シリーズ(Nitro Apexなど)
・Reedin:『Hyper Model』(ALUULAを採用する一方で、ミシンを使わない無縫製溶着技術『Pro-Weld』を用いたBrainchildファクトリー製カイトも開発し、異なるアプローチで極限の軽量化を追求している)
この黄金の素材が市場を席巻する裏には、様々な思惑が交錯していた。ベラン博士は2年間ガレージに籠り極秘で開発に没頭し、成功後は素材の商業化と業界全体への供給を目的として、Ocean Rodeoから独立した「ALUULA Composites」が設立された。さらに業界最大手のDuotoneとの間には水面下で高度な戦略的取引があり、Ocean Rodeoの特許技術をDuotoneが取得する代わりに、Duotone側が蓄積した膨大なALUULAのテストデータをALUULA側に提供するという、実質的なバーター取引が行われたとも言われている。
常識外れの性能の秘密は、その独自の構造にある。25年以上業界標準だったダクロン(ポリエステル織物)が約160g/㎡であるのに対し、ALUULAは70〜90g/㎡と約半分の重量しかない。それにもかかわらず、引き裂き強度はダクロンの10倍から20倍に達する。これは糸を編む「織物」ではなく、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維のラミネート構造であり、「共有結合(Covalent Bonding)」技術により接着剤を一切使わずに分子レベルで接合されているためだ。象徴的な金色は単なるデザインではなく、人工衛星などにも使われる強力なUV保護レイヤーの役割を果たしている。Duotoneの天才デザイナー、ラルフ・グローセルはこの素材の特性を次のように絶賛している。
「And then you have the alarmaterial and the alura is the most radical material currently available for inflatable parts. It waits 80g, a little bit above 80 and here you can already see 160g from a normal darkron and now you have 80g. Half, it’s 50%. It’s 50% then, these 50% is something which makes a huge difference.」
—ラルフ・グローセル
この極限の軽さと、風をはらんだ際にエネルギーを蓄え一瞬で元の形状に戻る「リバウンド特性」が、カイトに異次元のレスポンスと爆発的な上昇力をもたらしているのである。
🔗 関連リンク: Windsports – Aluula Composites
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