キャビテーション(cavitation)とは、流動する液体中の圧力が局所的に飽和蒸気圧より低くなった際、液体が気化して無数の気泡が発生する物理(流体力学)現象である。日本語では「空洞現象」とも呼ばれる。
ハイドロフォイルのウィングやフィンが水中を高速で進む際、ベルヌーイの定理に従って流速が上がる表面(主に負圧側となる上面)の圧力が急激に低下する。この圧力が限界を超えて低下すると、常温であっても水が沸騰状態に達し、細かい水蒸気の泡が発生する。これがキャビテーションの基本的な原理である。
カイトサーフィンにおいては、ボードのスタイルによって影響度が異なる。ツインチップ・ボードの場合、風上へ上るための抵抗や揚力(リフト)の大部分はボードのヒールサイド側のレールが担っており、フィンの役割は限定的であるため、キャビテーションが深刻な問題になることは少ない。しかし、オールドスクールなコースレースボードやハイドロフォイルでは、水中のフィンやウィングそのものが強力な揚力と抵抗を生み出しているため、表面の流体力学的な変化が極めて重要になる。
フォイルが一定以上のスピード(一般的に35〜50ノット付近)に達してキャビテーションが発生すると、ウィング表面が水ではなく気泡の層で覆われる。これにより流体の層が剥離し、揚力が突発的に消失すると同時に、極めて大きなドラッグ(抗力)が発生する。結果としてライダーは超高速走行中に突然の失速やスピンアウトを起こし、激しいクラッシュに繋がるリスクがある。
さらに、発生した気泡が周囲の水圧によって瞬時に押し潰される(圧壊する)際、極めて強い衝撃波が生じる。これが長期間繰り返されると、カーボンなどの強固なフォイル素材であっても表面に微細なダメージ(壊食)が蓄積されることがある。スピードの限界に挑む最先端のフォイル設計においては、プロファイルの厚みを調整するなどして、このキャビテーションの壁をいかに突破するかが最大の技術的課題とされている。
※水面から空気を巻き込むベンチレーションとは異なり、キャビテーションは純粋な速度による圧力低下が原因である。
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