2019 GKA Freestyle World Cup Cumbuco (Superkite Brazil)

概要

「今の気持ちを説明する言葉が本当に見つからない。このビーチにいるみんな、スポンサーのDuotone、そして今サポートしてくれているすべての人に感謝したい。本当に言葉がないよ。このまま1位にとどまって、さらに攻め続けたい(sending it)と願っている」

ヴァレンティン・ロドリゲス

この言葉は、極限のプレッシャーと数々の予期せぬアクシデントの中で戦い抜いた若きライダーが、死闘の直後に絞り出した魂の声である。2019年にブラジルクンブコで開催されたGKAフリースタイル・ワールドカップ(Superkite Brazil)は、単なる勝敗やリザルトの数字だけでは決して語り尽くせない、信じられないような悲劇と奇跡が交錯した歴史的な大会となった。

開催地とコンディション

舞台となったクンブコは「フリースタイルの聖地」として世界中に名高く、4度の世界王者であるカルロス・マリオのホームグラウンドでもある。しかし、今大会は自然との熾烈な闘いを強いられた。初日は風が極めて弱く不安定であり、選手が少しでも良い風を掴めるよう、ヒート間のインターバルを通常の4分から2分へと半減させる緊急ルールが適用された。息つく暇もないハイスピードな進行により、選手たちは体力の限界まで追い込まれた。さらに大会4日目には風が完全に止み、女子セミファイナルの途中で競技が強制終了・翌日順延となるなど、非常に過酷なコンディションであった。

また大会期間中には、カルロス・マリオの兄弟であり、地元で愛されたライダーであった故カルロス・マドセン(Carlos Madsen)を偲ぶ公式メモリアル・サービス(追悼式)がビーチで執り行われ、カイトコミュニティ全体が涙に包まれる感動的な一幕もあった。

フォーマットと出場選手

女子部門には、当時15歳にして世界タイトルに王手をかけていたミカイリ・ソル、ベテランのブルーナ・カジヤリタ・アルナウスピッパ・ヴァン・イアーセルらが参戦した。一方の男子部門は、地元クンブコの英雄カルロス・マリオが直前の怪我で無念の欠場となる中、17歳のヴァレンティン・ロドリゲスやアデウリ・コルニエルマクシム・シャブローらが年間王座を懸けて激突した。

そして今大会最大のサプライズとなったのが、地元カヴィピ(Cauipe)ラグーンで育った当時わずか11歳の少年、ダヴィ・リベイロの出場である。彼は貧しい地元の子どもたちにギアを寄付し未来の王者を育てる「Kite Cumbuco Juvenil」プロジェクトの出身であり、並み居る大人のトッププロを相手に物怖じすることなく、見事な「ヒンターバーガー5」をメイクして第2ラウンドへ進出するという衝撃的なデビューを果たした。

ハイライト・名勝負

女子部門の決勝では、信じられない悪夢が発生した。競技エリア内に一般のサーファーたちが乱入し、運営の度重なる警告にもかかわらず無法状態となったのだ。そして最後のトリックに挑んだブルーナ・カジヤがサーファーのボードに直撃し、彼女の膝が深く切り裂かれる大怪我を負う事態となった。同じヒートを戦っていたミカイリ・ソルは直ちに救助に向かったが、傷口の惨状に激しく動揺してパニック状態となり、そのままビーチへ引き返してしまうという惨事となった。

男子部門では、年間王座を巡る極限のサバイバルが展開された。タイトルレースに絡んでいたマクシム・シャブローは、セミファイナルのラストトリックで決勝進出に必要な8.15点以上を狙うも無念のクラッシュ。これにより、タイトルはヴァレンティン、アデウリの一騎打ちになり、「この決勝で上位に立った方が世界王者」という、シンプルなものになった。ヒート途中にはジェットスキーがカイトを轢いてしまい30分間中断するという異例のアクシデントも発生し、選手たちの精神力は極限まで削り取られていった。アデウリが6回目のトリックで「KGB7」を完璧に決め、9.73という驚異的なハイスコアで猛追する中、勝負の行方は最後の7回目のアテンプトへと託された。

大会の詳細結果と最終決戦の行方(ネタバレ注意)

ヴァレンティンは残された最後のアテンプトにすべてを懸け、完璧な軌道と圧倒的なパワーで「ハートアタック7」を成功させる。スコアボードに表示された数値は「9.63」。この瞬間、アデウリの最終トリックを残した状態で(コンボアウト)、ヴァレンティンのイベント優勝と、17歳でのGKAフリースタイル年間世界王者の栄冠が確定した。

敗れたアデウリは、ビーチで真っ先に親友ヴァレンティンを強く抱きしめ、こう語った。

「ヴァレンティンのために本当に、心から嬉しいよ」

—アデウリ・コルニエル

この美しいスポーツマンシップはビーチ全体を感動で包み込んだ。また、同じく決勝を戦ったリアム・ウェイリーも、若き王者の誕生を次のように絶賛した。

「ヴァレンティンのことは本当に嬉しいよ。17歳でワールドタイトルだなんて、本当に信じられないくらい素晴らしい(fucking amazing)。もちろん、自分もその場に立ちたかったけどね」

—リアム・ウェイリー

一方、女子部門では、圧倒的な実力を見せた15歳のミカイリ・ソルが優勝し、自身3度目の年間ワールドチャンピオンに輝いた。大怪我を負ったブルーナ・カジヤは見事2位を死守し、表彰式には松葉杖をついて登壇するという執念を見せた。

男子フリースタイル部門 最終結果

  • 1位:ヴァレンティン・ロドリゲス(コロンビア)※2019年年間ワールドチャンピオン
  • 2位:アデウリ・コルニエル(ドミニカ共和国)
  • 3位:リアム・ウェイリー(スペイン)
  • 4位:ルイス・アルベルト・クルズ(ドミニカ共和国)

女子フリースタイル部門 最終結果

  • 1位:ミカイリ・ソル(ブラジル)※自身3度目の年間ワールドチャンピオン
  • 2位:ブルーナ・カジヤ(ブラジル)
  • 3位:リタ・アルナウス(スペイン)
  • 4位:ピッパ・ヴァン・イアーセル(オランダ)

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