Red Bull King of the Air 2020

概要

新生Northブランドの台頭など、カイトシーンの勢力図が変化しつつあった2020年のRed Bull King of the Air。この年の大会は、これまでの歴史の中でも類を見ない革新的なフォーマットと、常識破りの挑戦によって幕を開けた。そして過酷なトーナメントの結末には、かつて両足骨折という絶望的な大怪我を負いながらも、不屈の精神で完全復活を懸ける一人の男の感動的なドラマが待ち受けていた。

開催地とコンディション

舞台はおなじみの南アフリカ・ケープタウンのカイト・ビーチ。この日は強烈な名物風ケープ・ドクターが安定して吹き荒れ、スポーツディレクターのセルジオ・カンタガリが「完璧な1日だった」と称賛するほどの極限のコンディションに恵まれた。通常は数日間に分けて行われることが多いKOTAだが、この年は朝から風の供給が途切れなかったため、約7時間・全34ヒートがわずか1日で完結するという、伝説の「Day of days」となった。

フォーマットと出場選手

2020年は新しい変則的なシードシステムが導入された。Round 1とRound 2は、世界中から選ばれたビデオエントリーやFly-toイベントの勝者たちが激突。そしてRound 3からは、ケビン・ランゲレージェッセ・リッチマンラッセ・ウォーカーら前年のトップ6シード選手が満を持して合流するという、勝ち上がり組には過酷なフォーマットが採用された。

そしてこの年、強烈なインパクトを残した挑戦者が2人いる。
一人目は、KOTA史上初となる「ストラップレス・サーフボード」での本戦出場を果たしたアイルトン・コッツォリーノだ。足を固定しないサーフボードで、ケープタウンの暴風と巨大なキッカーに挑むというクレイジーなライディングは、ビッグエアの歴史に新たなページを刻んだ。
二人目は、女性初のKOTA本戦参戦となったアンジェリー・ブイヨだ。男子に混ざって出場した彼女は恐れを知らぬ特大ループを決め、Round 1でヒート最高点となる6.92を叩き出す大健闘を見せ、世界中に特大の衝撃を与えた。

ハイライト・名勝負

シード勢が登場するRound 3から、大会は一気にヒートアップする。Heat 18では、王者ケビン・ランゲレーとベテランルイス・クラザーンを相手に、アーロン・ハドロウがインプレッションスコアで上回り1位抜けを果たすという激戦が繰り広げられた。

大会のターニングポイントとなったのが、1対1のノックアウト方式となったRound 5(準々決勝)だ。Heat 27でディフェンディングチャンピオンであり3勝の記録を持つ絶対王者ケビン・ランゲレーとジェッセ・リッチマンが激突。ここでJesseが8.2のインプレッションスコアを叩き出し、2.14ポイント差でKevinを撃破する大波乱を起こす。
一方で、Heat 20を勝ち上がっていたユーアン・ジャスパンが巨大なループの着地で激しくクラッシュ。肋骨を負傷してレスキュージェットスキーが急行するなど、ビッグエアの持つ危険性も改めて浮き彫りとなった。

準決勝(Semi-Finals)はどれも歴史に残る死闘となった。
SF 1ではニック・ヤコブセンが巨大なブギーループなどを決めて番狂わせを起こし、リアム・ウェイリーを撃破。
SF 2では、終盤にジェッセ・リッチマンがアンフックのハーフキャブ(Half Cab)などを完璧にメイクし、マーク・ジェイコブスに劇的な逆転勝利を収める。
SF 3はアーロン・ハドロウとスティーブン・アッケシュダイクの大激戦。Stevenは8点台を含む高得点(8.08, 7.94, 7.44)を揃え、トリック単体の合計ではAaron(7.92, 7.62, 7.58)を上回る凄まじいライディングを見せた。しかし、ヒート全体を評価するインプレッションスコアの魔物(8.20対7.50)が勝敗を分け、大逆転でAaronが決勝へ駒を進めた。

決勝戦の舞台には、ジェッセ・リッチマン、ニック・ヤコブセン、アーロン・ハドロウという過去のKOTA王者3名が顔を揃える歴史的な展開となった。これまで「決勝でピークを過ぎて崩れてしまう」という課題を抱えていたジェッセ・リッチマンだが、この日は見事に戦略を修正。「Kung Fu」などのアンフック技や完璧なローテーションを冷静に連発し、インプレッションスコアで「9.0」という驚異的な数字を叩き出してライバルたちを圧倒した。

大会の詳細結果と結末を表示(ネタバレ注意)

オープン部門 決勝

1位: ジェッセ・リッチマン (Total 34.10 / Impression 9.0)

2位: ニック・ヤコブセン (Total 31.52 / Impression 7.8)

3位: アーロン・ハドロウ (Total 29.94 / Impression 7.3)

2014年の両足骨折から血の滲むようなリハビリを経て、2013年以来自身2度目となるアフリカンマスクを手にしたジェッセ・リッチマン。表彰台で生まれたばかりの愛娘と共に勝利を祝う彼の姿は、KOTAの歴史に刻まれる最も美しい瞬間の一つとなった。

なお、大会を通じて最高高度を記録した「Woo Highest Jump of the Day」は22mのビッグエアを飛んだマーク・ジェイコブスが獲得。最も過激なトリックに贈られる「Mystic Move Of The Day」は、Kite-loop board-offで10点満点中9.02点を叩き出したニック・ヤコブセンの手に渡っている。

全ヒートラダー

Round 1 (予選)

Heat 1: 1位 アーロン・ハドロウ / 2位 ユーアン・ジャスパン / 3位 Ozwald Smith

Heat 2: 1位 マーク・ジェイコブス / 2位 ジェイソン・ヴァン・デル・スプイ / 3位 Stuart Downey

Heat 3: 1位 Ross-Dillon Player / 2位 ジョシュア・エマニュエル / 3位 Ryan de Witte

Heat 4: 1位 Reno Romeu / 2位 スティーブン・アッケシュダイク / 3位 アイルトン・コッツォリーノ (初のストラップレスライダー)

Heat 5: 1位 Antonin Rangin / 2位 Clement Huot / 3位 ルイス・アルベルト・クルズ

Heat 6: 1位 ポシート・マルティネス / 2位 ルイス・クラザーン / 3位 アンジェリー・ブイヨ

Round 2 (敗者復活戦)

Heat 7: 1位 スティーブン・アッケシュダイク / 2位 Ryan de Witte

Heat 8: 1位 ジョシュア・エマニュエル / 2位 アイルトン・コッツォリーノ

Heat 9: 1位 ルイス・クラザーン / 2位 ルイス・アルベルト・クルズ

Heat 10: 1位 ユーアン・ジャスパン / 2位 アンジェリー・ブイヨ

Heat 11: 1位 Ozwald Smith / 2位 ジェイソン・ヴァン・デル・スプイ

Heat 12: 1位 Stuart Downey / 2位 Clement Huot

Round 3 (トップシード登場 / 1位はR5やSF方面へスキップ)

Heat 13: 1位 マーク・ジェイコブス / 2位 ユーアン・ジャスパン / 3位 ラッセ・ウォーカー

Heat 14: 1位 リアム・ウェイリー / 2位 ポシート・マルティネス / 3位 Ozwald Smith

Heat 15: 1位 ジェッセ・リッチマン / 2位 ジョシュア・エマニュエル / 3位 Reno Romeu

Heat 16: 1位 スティーブン・アッケシュダイク / 2位 Aurelien Petreau / 3位 Ross-Dillon Player

Heat 17: 1位 ニック・ヤコブセン / 2位 Stuart Downey / 3位 Antonin Rangin

Heat 18: 1位 アーロン・ハドロウ / 2位 ケビン・ランゲレー / 3位 ルイス・クラザーン

Round 4 (1対1のノックアウト)

Heat 19: 1位 Stuart Downey / 2位 Ross-Dillon Player

Heat 20: 1位 Antonin Rangin / 2位 ユーアン・ジャスパン

Heat 21: 1位 ルイス・クラザーン / 2位 Aurelien Petreau

Heat 22: 1位 ジョシュア・エマニュエル / 2位 ラッセ・ウォーカー

Heat 23: 1位 ケビン・ランゲレー / 2位 Ozwald Smith

Heat 24: 1位 Reno Romeu / 2位 ポシート・マルティネス

Round 5 (準々決勝相当・1対1のノックアウト)

Heat 25: 1位 マーク・ジェイコブス / 2位 ルイス・クラザーン

Heat 26: 1位 リアム・ウェイリー / 2位 Stuart Downey

Heat 27: 1位 ジェッセ・リッチマン / 2位 ケビン・ランゲレー

Heat 28: 1位 Steven Akkersdijkl / 2位 Reno Romeu

Heat 29: 1位 ニック・ヤコブセン / 2位 Antonin Rangin

Heat 30: 1位 アーロン・ハドロウ / 2位 ジョシュア・エマニュエル

Semi-Finals (準決勝)

SF 1: 勝者 ニック・ヤコブセン / 敗者 リアム・ウェイリー

SF 2: 勝者 ジェッセ・リッチマン / 敗者 マーク・ジェイコブス

SF 3: 勝者 アーロン・ハドロウ / 敗者 スティーブン・アッケシュダイク

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