2018 GKA Kite World Tour (Season Wrap-Up)

概要

2018年はカイトボード競技の歴史において、野心と進化に満ちたパラダイムシフトのシーズンだった。
伝統的なウェーブ&ストラップレス競技(Kite-Surf)に加え、ビッグエアとフリースタイルを極限で融合させた「エアーゲームス(ツインチップ)」という過酷な新フォーマットが誕生。選手たちは荒れ狂う海や、時には絶望的な無風という大自然の気まぐれに立ち向かいながら、カイトボードの歴史に新たな基準(ベンチマーク)を次々と打ち立てていった。

前半〜中盤戦:エアーゲームスの誕生と限界高度の追求

2018 カーボベルデ

シーズンはポンタ・プレタの極上ウェーブで幕を開けた。「ここは今のサーフィン界におけるブラジルのような場所だ。猛者たちが互いに刺激し合って育つ」と実況が語る凄まじい環境。風が極めて微弱な中、島北部のスポット「シークレッツ」に会場を移して行われた女子決勝では、ハワイから遥々やってきたムーナ・ホワイトがヤルー・ランゲレーを僅差で下し、「こんな素晴らしい波を見て、頂点に立てて本当に幸せ」と喜びを爆発させた。一方の男子は、2016年王者マチュ・ロペスがラウンド4でブラジルのペドロ・マトスに敗れる波乱や、パウリーノ・ペレイラが1日に2度の10点満点を叩き出す見せ場が生まれた。そして決勝では、競技史上初の波の上での「グラブ・バックロール」をメイクした絶対王者アイルトン・コッツォリーノが、過去のヒートで一度も勝てていなかった宿敵ケアヒ・デ・アボイティスを遂に打ち破り、地元開幕戦で見事な優勝を飾った(3位にセバスチャン・リベイロ、4位にペドロ・マトス、5位にミトゥ・モンテイロ)。

2018 ダフラ

モロッコ・ダフラでのKite-Surf第2戦。ウェーブとフリースタイルのコンボフォーマットが採用され、シングルとダブルの2つのエリミネーションが実施された。男子はシングル準決勝でアイルトン・コッツォリーノがマチュ・ロペスを、ケアヒ・デ・アボイティスがミトゥ・モンテイロを破り、2戦連続でアイルトン対ケアヒの頂上決戦に。ダブル・エリミネーション決勝でもアイルトンが終了間際に「フラット3・ハンドル・パス」を決めてケアヒを振り切り、開幕2連勝を達成した(3位はミトゥ・モンテイロ)。女子ではヤルー・ランゲレーがバックハンドの特訓を実らせ、ムーナ・ホワイトとのスーパーファイナル(再戦)を制して自身の誕生日にGKAツアー初優勝を飾った。

2018 ルカート

エアーゲームスの記念すべき開幕戦となるはずだったフランスのルカート。しかし、伝統ある国際的ウィンドスポーツの祭典「モンディアル・デュ・ヴァン(Mondial du Vent)」の約20年の歴史において初となる完全無風状態(ノーウィンド)に見舞われ、競技規定を満たせず幻の大会として無情のキャンセルとなった。

2018 ポルトガル

ヴィアナ・ド・カステロでのKite-Surf第3戦。雨と無風に泣かされ、最終日にようやく風が吹くも波はゼロ。急遽「100%フリースタイル」に変更される中、男子決勝ではマチュ・ロペスが競技史上初となる「トリプルフロントロール」をメイクしてアイルトン・コッツォリーノを下し、波のないフラットウォーターにおけるストラップレスの新たな扉をこじ開けて今季初優勝を挙げた。女子はムーナ・ホワイトが安定したスコアでヤルー・ランゲレーを破り、今季2勝目を飾った。

2018 タリファ

ヨーロッパの風の首都で、Kite-Surfとエアーゲームスが同時開催された歴史的メガイベント。Kite-Surf部門では、3回戦でバルバドスのサイモン・ジューステンがケアヒ・デ・アボイティスを破る波乱が起きる中、男子はアイルトン・コッツォリーノが強力なハンドル・パス2本を決めて決勝でマチュ・ロペスを下し優勝。女子はムーナとヤルーがタリファ戦を欠場(ディスカード)する中、地元スペインの新星カルラ・エレーラ・オリアが圧勝した。一方、強烈な東風「レバンテ」が吹き荒れたエアーゲームスでは、ジェッセ・リッチマンとミカイリ・ソルが圧倒的な高さを見せつけて優勝。ツアーの意義についてアーロン・ハドロウが「最も総合力のあるライダーを戴冠させるためのものだ」と語った通り、真の万能性が試された。

2018 キャバレテ

ドミニカ共和国の強力な貿易風の下で行われたエアーゲームス。ローカルのポシート・マルティネスが熱狂的な声援を背に3位に食い込む中、カルロス・マリオとミカイリ・ソルが複雑なハンドル・パスとビッグエアを完璧に融合させ優勝を飾った。

2018 フェルテベントゥラ

Kite-Surf部門の「ストラップレス・フリースタイル」と「ビッグエア」競技が開催されたフェルテベントゥラ。35ノットの爆風とフラットな海面という極限コンディションの下、メインのフリースタイル部門は女子2名を含む24名の単一トーナメントとして実施された。決勝では絶対王者アイルトン・コッツォリーノがマチュ・ロペスに対し、終了間際に100ヤード(約90m)を飛ぶ特大トリックをメイク。ツアー史上初となるジャッジ5名全員からの10点満点を獲得して5戦4勝目を挙げ、この時点で計算上の年間ワールドチャンピオン(2連覇)を確定させた。さらにジェームズ・カルーが制したビッグエア部門においても、アイルトンはストラップレスボードでありながら「14.3秒」という狂気のハングタイム(滞空時間)世界記録を樹立。実況が「彼が何かを望むとき、ゴールドだけを目指して突き進む。彼はすべての人の純粋なインスピレーションだ」と絶賛した。

ミッドシーズン:タイトルレースの行方

過酷な連戦を経て折り返し地点を過ぎ、後半戦を前にタイトルレースは熾烈を極めていた。

  • Kite-Surf部門:男子はアイルトン・コッツォリーノが圧倒的なパワーと滞空時間で5戦4勝を挙げ、すでに計算上の年間王者を確定させる独走状態。その背後でケアヒ・デ・アボイティスやマチュ・ロペス、ミトゥ・モンテイロら実力者たちが年間表彰台を巡り激しく争う展開となった。女子は序盤戦を牽引したムーナ・ホワイトが背中の負傷で戦線離脱する中、全戦に出場しタリファ戦を制したカルラ・エレーラ・オリアがランキング首位に浮上し、ヤルー・ランゲレーと激しい首位争いを繰り広げていた。
  • エアーゲームス部門:男子は「ビッグエアの申し子」ジェッセ・リッチマンと「フリースタイルの天才」カルロス・マリオがポイントで完全に並び、雌雄を決する最終戦フェーマルンへ突入。女子は14歳のミカイリ・ソルが圧倒的な強さで全勝をキープし、女王の座に王手をかけていた。

後半戦:王者の覚醒と伝説の誕生

2018 フェーマルン

エアーゲームスの最終戦。数万人の観客が見守る中、男子はジェッセの命がけのメガループと、カルロス・マリオの完璧なハンドル・パスが激突。結果、カルロスが大観衆の前で僅差の勝利を収め、カウントバックの末に初代年間王者に輝いた。女子もミカイリ・ソルが優勝し、2人は同年に純粋なフリースタイルとエアーゲームスの「ダブルクラウン(2冠)」という前人未到の偉業を達成した。

2018 プレア

ブラジル・プレアでのKite-Surf第6戦。毎日30ノット超の強風が吹き荒れる中、シングル・エリミネーション決勝で地元育ちの19歳カミーユ・デラノワが絶対王者アイルトンを破る歴史的大番狂わせを起こす。しかしダブル・エリミネーションで這い上がったアイルトンは完全に別次元のギアに入り、歴史的な特大「ブギループ(カイトループ・フロントロール)」をメイクして1日に2度の10点満点を記録。カミーユに1勝して持ち込んだスーパーファイナルでは、終了後のジャッジのスコア再確認(カウントバック)の末にアイルトンが僅差で逆転優勝を果たし、年間王者の貫禄を見せつけた。
女子はシングル初戦で敗退したカルラ・エレーラ・オリアがダブル・エリミネーションを勝ち上がってヤルー・ランゲレーを1度破りスーパーファイナルへ持ち込むも、ヤルーが残り1分で特大の「ロデオ」をメイクして劇的勝利を収め、ランキング首位を奪還して年間女王に王手をかけた。
またこの大会では、カミーユの妹であるカプシン・デラノワが当時わずか12歳でワイルドカードとして世界デビュー。母親の「とりあえず試しにやってみる」という言葉とは裏腹に、バックロールなどを決めて堂々たるライディングを見せ、世界のシーンに衝撃を与えた。

2018 トーキー

オーストラリアの極寒の海、重くパワフルな南極海のうねりが待ち受けるKite-Surf最終戦。数日間の風待ちを経て、最終日は朝5時からスタートする過酷な1日となった。「雨や曇りを経て、最終的には完璧なクロス・オフショアと美しい夕日という素晴らしいコンディションに恵まれた」と実況が語る中、男子準々決勝ではセバスチャン・リベイロが王者アイルトン・コッツォリーノを破る番狂わせを演じて決勝へ進出。その決勝では、ローカルの波を完全に捉えたケアヒ・デ・アボイティスが8.1のハイスコアを叩き出し、自身の誕生日に母国優勝を飾ると共にマチュ・ロペス(今大会3位)を逆転して年間ランキング2位を獲得した。女子はヤルー・ランゲレーがカルラ・エレーラ・オリアとの直接対決となった決勝を制して優勝し、通算3度目のワールドタイトル(年間女王)を獲得。激動の2018年シーズンは最高のサンセットと共に幕を閉じた。

2018 年間最終ランキング(詳細結果・ネタバレ注意)

2018 Kite-Surf 年間最終ランキング トップ10

男子

  1. アイルトン・コッツォリーノ(ITA / CV)
  2. ケアヒ・デ・アボイティス(AUS)
  3. マチュ・ロペス(SPN)
  4. ミトゥ・モンテイロ(CV)
  5. カミーユ・デラノワ(FRA)
  6. ジャン・マルコス・リベラス(DR)
  7. ペドロ・マトス(BRA)
  8. パウリーノ・ペレイラ(POR)
  9. セバスチャン・リベイロ(BRA)
  10. ジェームズ・カルー(AUS)

女子

  1. ヤルー・ランゲレー(NED)
  2. カルラ・エレーラ・オリア(SPN)
  3. シャルロット・カルペンティエ(FRA)
  4. ヨハンナ・カタリーナ・エディン(SWE)
  5. ムーナ・ホワイト(アメリカ)
  6. イネス・コレイア(POR)
  7. Odile Cavin (SUI)
  8. ライデ・ヘックルート(RSA)
  9. マリー・ゴートロン(FRA)
  10. Didi Lopes (CV)

2018 エアーゲームス 年間最終ランキング トップ3

男子

  1. カルロス・マリオ(BRA)
  2. ジェッセ・リッチマン(アメリカ)
  3. マクシム・シャブロー(SUI)

女子

  1. ミカイリ・ソル(BRA)
  2. ハンナ・ホワイトリー(GBR)
  3. ピッパ・ヴァン・イアーセル(NED)

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