概要
2018年はカイトボード競技の歴史において、野心と進化に満ちたパラダイムシフトのシーズンだった。
伝統的なウェーブ&ストラップレス競技(Kite-Surf)に加え、ビッグエアとフリースタイルを極限で融合させた「エアーゲームス(ツインチップ)」という過酷な新フォーマットが誕生。選手たちは荒れ狂う海や、時には絶望的な無風という大自然の気まぐれに立ち向かいながら、カイトボードの歴史に新たな基準(ベンチマーク)を次々と打ち立てていった。
前半〜中盤戦:エアーゲームスの誕生と限界高度の追求
2018 カーボベルデ
シーズンはポンタ・プレタの極上ウェーブで幕を開けた。「ここは今のサーフィン界におけるブラジルのような場所だ。猛者たちが互いに刺激し合って育つ」と実況が語る凄まじい環境。風が極めて微弱な中、ハワイから遥々やってきたムーナ・ホワイトが「こんな素晴らしい波を見て、本当に幸せ」と喜びを爆発させた。一方の男子は、いきなり絶対王者アイルトン・コッツォリーノが敗れる波乱が起きたが、地元を知り尽くしたレジェンド、ミトゥ・モンテイロが王者の威信を死守した。
2018 ダフラ
モロッコ・ダフラでのKite-Surf第2戦。ウェーブとフリースタイルのコンボフォーマットが採用される中、ウェーブのスペシャリストであるセバスチャン・リベイロがマチュ・ロペスを破る番狂わせを起こす。女子ではヤルー・ランゲレーがバックハンドの特訓を実らせ、GKAイベントで初めてムーナを打ち破りツアー初優勝を飾った。
2018 ルカート
エアーゲームスの記念すべき開幕戦となるはずだったフランスのルカート。しかし、伝統ある国際的ウィンドスポーツの祭典「モンディアル・デュ・ヴァン(Mondial du Vent)」の約20年の歴史において初となる完全無風状態(ノーウィンド)に見舞われ、競技規定を満たせず幻の大会として無情のキャンセルとなった。
2018 ポルトガル
ヴィアナ・ド・カステロでのKite-Surf戦。雨と無風に泣かされ、最終日にようやく風が吹くも波はゼロ。急遽「100%フリースタイル」に変更される中、マチュ・ロペスが競技史上初となる「トリプルフロントロール」をメイクし、波のないフラットウォーターにおけるストラップレスの新たな扉をこじ開けた。
2018 タリファ
ヨーロッパの風の首都で、Kite-Surfとエアーゲームスが同時開催された歴史的メガイベント。強烈な東風「レバンテ」が吹き荒れる中、エアーゲームスではジェッセ・リッチマンとミカイリ・ソルが圧倒的な高さを見せつけて優勝。ツアーの意義についてアーロン・ハドロウが「最も総合力のあるライダーを戴冠させるためのものだ」と語った通り、真の万能性が試された。
2018 キャバレテ
ドミニカ共和国の強力な貿易風の下で行われたエアーゲームス。ローカルのポシート・マルティネスが熱狂的な声援を背に3位に食い込む中、カルロス・マリオとミカイリ・ソルが複雑なハンドル・パスとビッグエアを完璧に融合させ優勝を飾った。
2018 フェルテベントゥラ
Kite-Surf部門の「ストラップレス・フリースタイル」と「ビッグエア」競技が開催されたフェルテベントゥラ。35ノットの爆風とフラットな海面という、限界高度を追求するための極限コンディションとなった。ジェームズ・カルーがビッグエア部門を制する中、絶対王者アイルトンはメインのフリースタイル部門において、ストラップレスボードでありながら「14.3秒」という狂気のハングタイム(滞空時間)を記録。実況が「彼が何かを望むとき、ゴールドだけを目指して突き進む。彼はすべての人の純粋なインスピレーションだ」と絶賛した。
ミッドシーズン:タイトルレースの行方
過酷な連戦を経て折り返し地点を過ぎ、後半戦を前にタイトルレースは熾烈を極めていた。
- Kite-Surf部門:男子はアイルトン・コッツォリーノが圧倒的なパワーと滞空時間で他を寄せ付けず首位を独走。それをマチュ・ロペスやケアヒ・デ・アボイティス、ミトゥ・モンテイロら実力者たちが必死に追う展開。女子はムーナ・ホワイトとヤルー・ランゲレーが星を分け合い、ランキング首位で完全に同点に並ぶ激熱のデッドヒートを繰り広げ、そこにカルラ・エレーラ・オリアが猛追していた。
- エアーゲームス部門:男子は「ビッグエアの申し子」ジェッセ・リッチマンと「フリースタイルの天才」カルロス・マリオがポイントで完全に並び、雌雄を決する最終戦フェーマルンへ突入。女子は14歳のミカイリ・ソルが圧倒的な強さで全勝をキープし、女王の座に王手をかけていた。
後半戦:王者の覚醒と伝説の誕生
2018 フェーマルン
エアーゲームスの最終戦。数万人の観客が見守る中、男子はジェッセの命がけのメガループと、カルロス・マリオの完璧なハンドル・パスが激突。結果、カルロスが大観衆の前で僅差の勝利を収め、カウントバックの末に初代年間王者に輝いた。女子もミカイリ・ソルが優勝し、2人は同年に純粋なフリースタイルとエアーゲームスの「ダブルクラウン(2冠)」という前人未到の偉業を達成した。
2018 プレア
ブラジル・プレアでのKite-Surf戦。毎日30ノット超の強風が吹き荒れる中、地元育ちの19歳カミーユ・デラノワが絶対王者アイルトンを破る歴史的大番狂わせを起こす。しかし敗者復活戦から這い上がったアイルトンは完全に別次元のギアに入り、歴史的な特大「ブギループ(カイトループ・フロントロール)」をメイク。1日に2度の10点満点を叩き出し、逆転優勝と共に年間ワールドチャンピオンを確定させた。
女子は残り1分でヤルーが特大の「ロデオ」をメイクして劇的勝利を収め、年間女王に王手をかけた。
またこの大会では、カミーユの妹であるカプシン・デラノワが当時わずか12歳でワイルドカードとして世界デビュー。「とりあえず試しにやってみる」という言葉とは裏腹に、バックロールなどを決めて堂々たるライディングを見せ、世界のシーンに衝撃を与えた。
2018 トーキー
オーストラリアの極寒の海、重くパワフルな南極海のうねりが待ち受けるKite-Surf最終戦。数日間の風待ちを経て、最終日は朝5時からスタートする過酷な1日となった。「雨や曇りを経て、最終的には完璧なクロス・オフショアと美しい夕日という素晴らしいコンディションに恵まれた」と実況が語る中、ローカルの波を完全に捉えたケアヒ・デ・アボイティスが8.1のハイスコアを叩き出し優勝。女子はヤルー・ランゲレーが優勝して見事年間女王に輝き、激動の2018年シーズンは最高のサンセットと共に幕を閉じた。
2018 年間最終ランキング(詳細結果・ネタバレ注意)
2018 Kite-Surf 年間最終ランキング トップ10
男子
- アイルトン・コッツォリーノ(ITA / CV)
- マチュ・ロペス(SPN)
- ケアヒ・デ・アボイティス(AUS)
- ミトゥ・モンテイロ(CV)
- カミーユ・デラノワ(FRA)
- ジャン・マルコス・リベラス(DR)
- パウリーノ・ペレイラ(POR)
- ジェームズ・カルー(AUS)
- Gustavo Arrojo (SPN)
- ラルフ・ボーレン(FRA)
女子
- ヤルー・ランゲレー(NED)
- カルラ・エレーラ・オリア(SPN)
- シャルロット・カルペンティエ(FRA)
- ヨハンナ・カタリーナ・エディン(SWE)
- ムーナ・ホワイト(アメリカ)
- イネス・コレイア(POR)
- Marie Gautron (FRA)
- Odile Cavin (SUI)
- Didi Lopes (CV)
- Justyna Sverpwska (POL)
2018 エアーゲームス 年間最終ランキング トップ3
男子
- カルロス・マリオ(BRA)
- ジェッセ・リッチマン(アメリカ)
- マクシム・シャブロー(SUI)
女子
- ミカイリ・ソル(BRA)
- ハンナ・ホワイトリー(GBR)
- ピッパ・ヴァン・イアーセル(NED)
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