「正直に言って最高だよ、地元カバレテと全く同じコンディションだからね。オレにとってカバレテもコロンビアもブラジルも同じなんだ。コロンビア、ブラジル、ドミニカ共和国——オレたちは兄弟みたいなものさ。」
概要
2023年3月1日から3月5日にかけて、コロンビア北部のカリブ海沿岸に位置するサリナス・デル・レイ(Salinas del Rey)で開催された『2023 GKA Freestyle-Kite World Cup Salinas del Rey』。全5戦で争われる2023年Qatar Airways GKAフリースタイル・ワールドツアーの第2戦であり、前年のツアー初開催に続いて2年連続での開催となった。世界16カ国から集結した35名のライダー(男子27名、女子8名)が、カリブ海の強風と天然のウェーブキッカー(波のランプ)が待ち受けるタフな海面に挑み、新採点フォーマット「バラエティ・スコア」の真価が試される熱い戦いを繰り広げた。
開催地とコンディション:強風とウェーブキッカーが試す「バラエティ・スコア」
会場となったサンタ・ヴェロニカ近郊のプラヤ・サリナス・デル・レイ(Playa Salinas del Rey)は、半閉鎖的なポイント・ブレイクの地形をしており、岬を回り込む小波がアウトサイドに絶好のキッカー(踏み切り台)を作り出し、インサイドにはチョッピーな水面とフラットなセクションが混在するユニークなスポットである。
前年の初開催からわずか1年で現地のカイトボーディング熱は爆発的な高まりを見せ、ビーチには連日多くの地元観衆が詰めかけた。
その一方で、膝の高さにもなるチョップと連日25〜30ノット超が吹き荒れる北北東の貿易風(選手たちは7平米〜10平米の小サイズカイトを使用)は、前年に多くの負傷者を出したほどハードなコンディションとしても知られていた。
しかし2023年シーズンは、開幕戦カタールから導入された「7点満点のバラエティ・スコア(上位4本のトリックが異なるトリック・ファミリーにまたがることでボーナス点が入る仕組み)」が存在した。フラット海面での高回転ハンドル・パス一辺倒ではなく、波のキッカーを活かした大ジャンプやトー・サイド離水、着水から次の波へと繋ぐコンボが高く評価されるため、過酷な海面をクリエイティブに攻略するライダーたちが大きな輝きを放つこととなった。
フォーマットと出場選手
競技は1ヒート7トライのうち上位4本のトリック得点(40点満点)に、最大7点のバラエティ・スコアを加えた「47点満点」のフォーマットで争われた。
男子部門には、首に痛みを抱えながらも開幕戦カタールに続く連勝を狙う世界王者ジャンマリア・コッコルート(イタリア)、開幕戦で0.43点差の2位に惜敗し、今大会に向けて1ヶ月間コロンビアに滞在して特訓を積んできた4度の元世界王者カルロス・マリオ(ブラジル)、前年コロンビア大会覇者のマノエル・ソアレス(ブラジル)、フリーライドスキー世界選手権(FWT)出場のため開幕戦を欠場し今大会がシーズン初戦となったスイスのマクシム・シャブロー、そして地元コロンビアの英雄である2019年王者ヴァレンティン・ロドリゲスとファン・ロドリゲスらが出場。さらに、かねてよりルーカス・アーセノルトらとともに北米のウェイクスタイル・シーンから旧採点ルールに対して積極的に改善を訴えており、ヘッドジャッジのアルヴァロ・オニエヴァから直々に「新フォーマットを試しに来ないか」と招待を受けてワイルドカード参戦を果たしたカナダのジャック・リーダーも名を連ねた。
女子部門には、開幕戦カタールで劇的な復活優勝を遂げたベテランブルーナ・カジヤ(ブラジル)、そのカタールで2位に敗れリベンジに燃える18歳の5連覇女王ミカイリ・ソル、スウェーデンのナタリー・ランブレヒト、スペインのクラウディア・レオンとアレハンドラ・トレス、デンマークのテレーゼ・ターベル、ブラジルのエステファニア・ローザ、フランスのマチルダ・ルウの8名が参戦した。
ハイライト・名勝負
1. 女子序盤戦(Day 1)と男子序盤戦(Day 2):新ルールを体現したジャック・リーダーとポシート・マルティネスの9.00点
初日(3月1日)は女子のラウンド1から準々決勝までが消化された。ラウンド1でナタリー・ランブレヒトが4本を確実に揃えてアレハンドラ・トレスに勝利すると、準々決勝ではエステファニア・ローザがテレーゼ・ターベルを、アレハンドラ・トレスが「S-Bend to Blind」でマチルダ・ルウを下して準決勝へ進出。この日のハイライトは、絶対女王ミカイリ・ソルがスタイリッシュな「ヒンターバーガー5」で叩き出した女子最高得点「8.00点」であった。
続く大会2日目(3月2日)には男子のラウンド1からラウンド3までが一気に行われた。ここで観客やジャッジを大いに沸かせたのが、ヘッドジャッジの招待に応えてワイルドカード参戦したカナダのジャック・リーダーであった。自身が求めていた多様性重視の新フォーマットを水を得た魚のように活かし、オープニングトリックで特大の「Slim Chance to Blind(リワインド)」を決めていきなり「8.00点」をマーク。続けて「Toeside Back 5」や両方向へのパスを織り交ぜる圧巻のライディングで準々決勝まで勝ち上がった。
また、ドミニカ共和国のベテランポシート・マルティネスがアウトサイドのキッカーを使った特大の「フロントサイド 319」で「9.00点」を叩き出し、1ヶ月間の現地合宿でキッカーに完全順応していたカルロス・マリオもトー・サイドの「ダムダム5(トゥーツィーロール 5)」でハイスコアを並べた。
2. 男子ラウンド4・準々決勝(Day 3):13歳フィン・フリューゲルの8強入り、9.40点のスリム9、そして「死の組」
10平米のカイトでスタートした大会3日目(3月3日)の男子ラウンド4では、フランスのヴァレンティン・ガラットが「317(8.87点)」、地元コロンビアのヴァレンティン・ロドリゲスが「319(8.50点)」とハイスコアを連発した。
続く準々決勝では、3つの大きなドラマが生まれた。
1つ目は、13歳のドイツの新星フィン・フリューゲルの快進撃である。6歳からカイトを始めたフィン・フリューゲルは、地元コロンビアの元世界王者ヴァレンティン・ロドリゲスを破る金星を挙げ、キャリア初となるベスト8(準決勝)進出の夢を叶えた。
2つ目は、ドミニカ共和国のルイス・アルベルト・クルズが放った衝撃の一撃である。アウトサイドのキッカーを捉えて驚異的な高さの「スリムチャンス9(スリム9)」を完璧に着水させ、この日の最高得点となる「9.40点」を叩き出して準決勝へ一番乗りを果たした。
そして3つ目が、王者ジャンマリア・コッコルート、カルロス・マリオ、前年大会3位の地元ヒーローファン・ロドリゲス、そして前日から快進撃を続けていたカナダのジャック・リーダーの4名が同組で激突した「死の組」の準々決勝であった。ファン・ロドリゲスが「バックモブ 5」で先制すれば、カルロス・マリオは「ダブル・ハートアタック」や「クロウ・モブ5」、さらには「トゥーツィーロールからダブル・ヒンターバーガー 5へ繋ぐコンボ」で応戦。終盤にはジャンマリア・コッコルートとファン・ロドリゲスが全く同じコンボトリックを応酬する白熱の展開となったが、わずかに完成度で上回ったジャンマリア・コッコルートとカルロス・マリオが上位2枠を掴み取り、新ルールを象徴する活躍を見せたジャック・リーダーと地元コロンビア勢はすべてこの準々決勝で姿を消す結果となった。
3. 男女準決勝(Day 4):バラエティ不足に泣いた大技と、開幕戦と同カードになった女子決勝
最終日(Day 4)の女子準決勝ヒート1では、開幕戦覇者ブルーナ・カジヤが1本もクラッシュしない完璧な演技を披露。「スリムチャンス」に続くインバートした「Front Roll to Blind」、さらにこのヒート唯一となるトー・サイドの「Crow Mobe(クロウ・モブ)」も成功させて1位通過を果たした。2位には「315」「ヒンターバーガー 3」「スリムチャンス」をまとめたスペインのクラウディア・レオンが入り、キャリア初となる2大会連続のファイナル進出を決めた。
女子準決勝ヒート2では、序盤から高さのある大技を2本決めたミカイリ・ソルが1位通過。序盤にクラッシュが続いて追い詰められたナタリー・ランブレヒトは、後半に「ヒンターバーガー 3」と高高度の「クロウ・モブ」をねじ込んで逆転で2位に滑り込み、女子決勝は開幕戦カタールと全く同じ4名による再戦となった。
男子準決勝ヒート1(カルロス・マリオ、マノエル・ソアレス、ルイス・アルベルト・クルズ、アーター・ギユベール)では、新フォーマットの戦略性が残酷なまでに浮き彫りとなった。前日に9.40点を出していたルイス・アルベルト・クルズは、この準決勝でも超特大の「フロントサイド 319」を決めてビーチを熱狂させたものの、異なるトリック・ファミリーを揃えきれずバラエティ・スコア不足で逆転敗退。キッカーから美しい「クロウ・モブ5」とコンボを揃えたカルロス・マリオが1位、前年覇者マノエル・ソアレスが2位で決勝へ進んだ。
男子準決勝ヒート2(マクシム・シャブロー、ジャンマリア・コッコルート、ルカ・ピトー、フィン・フリューゲル)では、スキーシーズンから合流したばかりのマクシム・シャブローがダブルグラブの「バックモブ 5」から、ノーズグラブを入れた特大の「スリムチャンス7」で「8.73点」を叩き出して1位通過。2位には「バックサイド317」と「クロウ・モブ5からピート・ローズ5へ繋ぐコンボ」をまとめたジャンマリア・コッコルートが入り、ルカ・ピトー(「ダムダム」や「ハートアタックからグラブ入りバックモブへのコンボ」を披露)と13歳のフィン・フリューゲルを退けて決勝進出を決めた。
「とにかくしっかりヒートを組み立てることを目標にスタートしたよ。本当にタフなコンディションだし、新しいフォーマットの中で4本のトリックを確実に揃えるのは簡単なことじゃないからね。だからうまくまとめられて最高に興奮しているし、ファイナルへの準備は万端だよ。」
—マクシム・シャブロー
大会の詳細結果を表示(ネタバレ注意)
「再びトップに戻ってくることができて本当に最高よ。正直なところコンディションはかなりタフだったけれど、なんとか乗り切ってここで優勝することができたわ。カタールで2位に終わっていたから、ここで1位を獲れて何というか——まさに『雪辱(リデンプション)』を果たせた気分よ。」
—ミカイリ・ソル
■ 女子グランドファイナル:キッカーで圧倒的な高さを引き出したミカイリ・ソルが開幕戦の雪辱を果たす
500人を超える熱狂的な観客がサリナス・デル・レイのビーチを埋め尽くす中、女子グランドファイナル(ミカイリ・ソル、クラウディア・レオン、ナタリー・ランブレヒト、ブルーナ・カジヤ)がスタートした。
開幕戦カタールではバラエティ・スコアの差でブルーナ・カジヤに敗れていた18歳の女王ミカイリ・ソルだったが、強風とチョップが入り混じるこのコロンビアの海面では他の追随を許さなかった。誰よりも巧みに波のキッカーを見極めて圧倒的な高さへと飛び出し、パワフルかつテクニカルなトリックを次々と着水させてトータル「23.90点」をマーク。2位にスペインのクラウディア・レオン、3位にスウェーデンのナタリー・ランブレヒト、4位にブルーナ・カジヤを抑え、前年大会に続くコロンビア2連覇と開幕戦のリベンジを成し遂げた。
■ 男子グランドファイナル:1ヶ月間の現地合宿が結実したカルロス・マリオが「31.23点」で復活優勝
大会のクライマックスとなった男子グランドファイナル(カルロス・マリオ、マクシム・シャブロー、ジャンマリア・コッコルート、マノエル・ソアレス)は、出場4名全員が極限のトリックを応酬する名勝負となった。
前年コロンビア覇者のマノエル・ソアレスが観客の目の前で強烈なオープナーを放ち、首の痛みを抱えながら戦っていたツアーリーダーのジャンマリア・コッコルートも正確なトリックを重ねたが、優勝争いはカルロス・マリオとマクシム・シャブローの2人によって争われた。
スキーのFreeride World Tourを戦いながらカタール大会をスキップして乗り込んだマクシム・シャブローは、練習不足を感じさせないスタイルとバリエーションを披露し、特大の「バックモブ7」で「8.23点」を叩き出して肉薄した。
しかし、開幕戦カタールでの惜敗直後から「トップに返り咲くのは時間の問題だ」と確信し、1ヶ月間にわたってこのサリナス・デル・レイで特訓を重ねてきた25歳のブラジル人、4度の元世界王者カルロス・マリオは一切の隙を見せなかった。最初から最後まで1本もリズムを崩すことなくパワフルなハンドル・パスと高いバラエティ得点を揃え、トータル「31.23点」を記録。マクシム・シャブロー(2位)、ジャンマリア・コッコルート(3位)、マノエル・ソアレス(4位)を退けてシーズン初優勝を飾り、年間ランキングでも首位へと浮上した。表彰式後には優勝したカルロス・マリオとミカイリ・ソルが歓喜のコロンビア大観衆の渦の中へと揉みくちゃにされながら祝福され、熱狂の南米ラウンドは幕を閉じた。
「ここコロンビアの大会で優勝できて、言葉では言い表せないほど嬉しいよ。カタールにいた時、『自分が再びトップに返り咲くのは時間の問題だ』と感じていたのを覚えている。だからブラジルへ戻ったあと、コロンビアで100%の力を出し切ることにすべてを集中してきたんだ。ファイナルは本当に壮絶なヒートだった。マノエル、コッコルート、マクシムは全員が素晴らしいライディングをしていたから、彼らに勝って優勝できて本当に幸せだよ。」
—カルロス・マリオ
【男子部門 最終結果(Men’s Division Final Results)】
1位:カルロス・マリオ(ブラジル)— 31.23 pts
2位:マクシム・シャブロー(スイス)
3位:ジャンマリア・コッコルート(イタリア)
4位:マノエル・ソアレス(ブラジル)
【女子部門 最終結果(Women’s Division Final Results)】
1位:ミカイリ・ソル(ブラジル / アメリカ)— 23.90 pts
2位:クラウディア・レオン(スペイン)
3位:ナタリー・ランブレヒト(スウェーデン)
4位:ブルーナ・カジヤ(ブラジル)
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