2021 GKA Kite-Surf World Cup Sylt

概要

「今日は正しい方向への大きな一歩になった。まだこれで終わりじゃないし、残りの大会もあるけれど最高に興奮しているよ。今年の初戦でいきなり1位を獲れて良かった。ずっと懸命に戦って猛練習を積んできたから、今は大きな安堵感がある。頂点に立つのは最高の気分だ。」

—ジェームズ・カルー

2021年8月17日から22日にかけて、ドイツ最北端の島・ズルトで開催された『2021 GKA Kite-Surf World Cup Sylt』。2020年2月のカーボベルデ大会以来、実に1年半ぶりの開催となったGKA Kite-Surf部門の2021年シーズン開幕戦である。男子26名・女子10名の精鋭が極寒の北海に集結し、1年半の空白期間で勢力図が劇的に塗り替わったことを世界に知らしめた歴史的な一戦となった。

開催地とコンディション

舞台となったのは、1980年代からウィンドサーフィンをはじめとする数々のワールドカップが開催されてきたドイツのウォータースポーツの聖地、ズルト島ヴェスターラントのブランデンブルガー・シュトランド(Brandenburger Strand)である。

真夏の8月とはいえ、北海の嵐がもたらした現地の気候は過酷そのものだった。風速25〜30ノットの冷たい強風が吹き荒れ、不規則に割れるチョッピーなオンショアの波が選手たちを迎え撃った。さらに1年半もの間ツアーがストップしていたことで、開幕前のビーチは実戦復帰への高揚感と独特の緊張感に包まれていた。

「待ちに待った瞬間でいろんな感情が込み上げているけれど、準備はできている。良い大会になりそうだ。」

—ジェームズ・カルー

フォーマットとランキング争いの戦略

2021年シーズンのタイトルレースを語る上で極めて重要となったのが、変則的な年間ランキング規定である。2020年シーズンがカーボベルデ開幕戦の1戦のみで中断されたため、GKAは「2020年カーボベルデ大会のリザルトを2021年の年間ランキングにそのまま持ち越す」という特別ルールを適用した。全4戦(2020年カーボベルデ、2021年ズルト、デンマーク、モロッコ)のうち上位3戦のポイントが有効となるため、前年のカーボベルデを欠場または早期敗退した選手には後がないプレッシャーが懸かり、逆にカーボベルデで優勝していたジェームズ・カルーらは圧倒的なアドバンテージを持ってズルトに乗り込んでいた。

競技には敗者復活枠を備えたディングル・エリミネーション方式が採用され、採点基準には「ベスト2ウェーブ+ベスト2ストラップレス・フリースタイル(計40点満点)」という50対50のハイブリッドフォーマットが敷かれた。どれほど高い空中技を持っていても、北海の難しいオンショア波で2本のウェーブスコアをまとめ上げなければ勝てないという、真の総合力が問われる戦略戦となった。

ヒートラダーのいたずらと名勝負

序盤ラウンドの激突とジェームズ・カルーの「35.28点」
初日から強風に乗ったハイペースな進行となり、男子序盤ラウンドでは16歳のキアヌ・マーテンが巨大なバックロール・ティクタクとカイトループ・ボードオフを決めて地元ドイツのアレックス・ミデラーを撃破。女子でも地元リューベック出身のソーニャ・ブンテが、2019年ズルト大会3位のスザンヌ・シュバルツトラウベルとのドイツ勢対決を制して準々決勝へ駒を進めた。また、元ツインチップ・フリースタイル3連覇女王のカロリーナ・ウィンコフスカもストラップレス部門に参戦し、バックロール・ボードオフを決めて会場を沸かせたが、同組の15歳カプシン・デラノワがすぐさまそれを上回る高さのフロントロール・ボードオフで応戦し、新世代の勢いを見せつけた。
そして大会初日のハイライトを完全にさらったのが、男子ラウンド4に登場したオーストラリアのジェームズ・カルーだった。初手の「Kiteloop Frontroll」で8.33点を叩き出した後、数回のクラッシュに見舞われたものの即座に立て直し、波のリップを利用した「フロントサイド360」で大会最高シングルスコアとなる「9.67点」をマーク。40点満点中「35.28点」という驚異的なヒートトータルを記録して他を圧倒した。

準決勝の衝撃:ペドロ・マトスが絶対王者アイルトン・コッツォリーノを撃破
大会2日目の早朝から始まったファイナルデーでは、男子準決勝第1ヒートで最大の番狂わせが起きた。絶対王者アイルトン・コッツォリーノとブラジルの新鋭ペドロ・マトスの対戦である。両者は25〜30ノットの強風を利用して全く同じレパートリーの超高難度エアリアルを空高く連発し、フリースタイル枠の2本ではほぼ互角のスコアを並べた。
勝敗の天秤を傾けたのは、ハイブリッド採点のもう片方の柱である「波」だった。不規則に崩れる北海のショア・ブレイクの中、ペドロ・マトスはブラジルで培った純粋なサーフスキルと判断力を発揮し、ヒート最終盤の最も重要な局面でクリーンなセット波を捕捉。見事なターンを刻んでスコアを伸ばし、「Cozzolino Airlines」ことアイルトン・コッツォリーノを僅差で振り切って決勝進出を決めた。
もう一方の準決勝第2ヒートでは、カナダのベテランリース・マイヤーズコウが波とエアの両面で高い完成度を見せたものの、ジェームズ・カルーがまたしても30点超えのハイスコアで圧倒し、決勝へと駒を進めた。

女子決勝:純粋ウェーブ戦略 vs 競技史上初のダブル・フロントロール
女子部門では、フランスのシャルロット・カルペンティエが3位決定戦でスウェーデンのヨハンナ・カタリーナ・エディンを下して表彰台を確保。決勝は15歳のフランス人ライダーカプシン・デラノワと、オーストラリアのペリ・ロバーツによる一騎打ちとなった。
この決勝は両者の戦略が真っ向から対立する興味深い展開となった。ペリ・ロバーツはエアリアルではなく「波」に照準を絞り、アウトからクリーンな波を選び出して鋭いターンとスプレーを連発する戦略を採った。しかし、この日のズルトの波はサイズと張りが足りず、ウェーブスコアだけではカプシン・デラノワの空中戦の爆発力を相殺しきれなかった。
カプシン・デラノワはヒート中、自身の代名詞である「ダブル・フロントロール」を完璧に着地させ、女子カイトサーフ競技史上初めて大会ヒートで同技をメイクした女性ライダーとなった。勢いに乗ったカプシン・デラノワはトータル25.8点をマークし、見事ツアー初優勝を成し遂げた。

「本当にハッピーだし最高に興奮しているわ。1年以上もの間、来る日も来る日もフリースタイルの練習を続けてきたから、こうしてこの大会で優勝できて本当にクールよ。」

—カプシン・デラノワ

一方で、準優勝となったペリ・ロバーツも、持ち越された2020年カーボベルデ大会のポイントと今回の2位ポイントが合算されたことで、大会翌朝に自身キャリア初となる「世界ランキング単独1位」へと躍り出た。

大会の詳細結果を表示(ネタバレ注意)

男子3位決定戦では、準決勝で惜敗したアイルトン・コッツォリーノがリース・マイヤーズコウを下して3位表彰台を死守。そして迎えた男子グランドファイナルは、準決勝で王者を破ったペドロ・マトスと、オーストラリアの重戦車ジェームズ・カルーによる頂上決戦となった。
勢いに乗るペドロ・マトスに対し、ジェームズ・カルーは決勝でも一切の隙を見せなかった。さらなる高高度のエアリアルとパワフルなウェーブ・ライディングを叩き込み、出場したすべてのヒートで「30点超え」を記録した唯一のライダーとして完全優勝を達成。2020年カーボベルデ大会に続くツアー2連勝を飾り、年間ワールドタイトル獲得へ向けて盤石の首位固めを果たした。

【男子部門(Men’s Division)】
1位:ジェームズ・カルー(オーストラリア)
2位:ペドロ・マトス(ブラジル)
3位:アイルトン・コッツォリーノ(イタリア / カーボベルデ)
4位:リース・マイヤーズコウ(カナダ)

【女子部門(Women’s Division)】
1位:カプシン・デラノワ(フランス)
2位:ペリ・ロバーツ(オーストラリア)
3位:シャルロット・カルペンティエ(フランス)
4位:ヨハンナ・カタリーナ・エディン(スウェーデン)

🔗 関連リンク: GKA Kite-Surf World Cup Sylt 2021 | THE AFTERMATH – GKA Kite World Tour

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