2021 GKA Kite World Cup Tarifa

概要

「タリファはいつだって驚きの詰まった袋だが、今回の袋には『重しの石』がぎっしり詰まっていた。なぜなら吹き荒れたのは50ノットの純粋なレバンテの暴風だったからだ!」

—ジョー・シアストゥラ

2021年6月22日から27日にかけて、スペイン南端のタリファで開催された『2021 GKA Kite World Cup Tarifa(Tarifa Kite Pro 2021)』。パンデミックによる約1年間のツアー中断を経て、16カ国から計40名のトップライダーが集結した2021年シーズンのGKAフリースタイル開幕戦である。本来は純粋なフリースタイル競技として予定されていたが、最大50ノットに達する歴史的な暴風によって大会途中で採点フォーマットが4段階にわたって書き換えられ、フリースタイルの絶対王者たちが次々と姿を消す前代未聞のサバイバル戦となった。

開催地とコンディション

舞台となったのは、地中海と大西洋が交わるヨーロッパの風の首都、タリファのバルデバケロス(Valdevaqueros)である。大会初日は穏やかな西風「ポニエンテ(Poniente)」が吹き、2014年世界王者のクリストフ・タックが第1ヒートのファーストトリックで完璧な「スリム7」を決めるなど、伝統的なニュースクール・フリースタイル日和として幕を開けた。

しかし2日目以降、予報画面が紫色の極限暴風域へと染まり、タリファ名物のクロス・オフショアの東風「レバンテ(Levante)」が牙を剥いた。風速は40〜45ノット、最大ガストは50ノットに達し、実況のジョー・シアストゥラが「飛ばされないようにポケットに石を入れておけ」と警告するほどの暴風雨が会場を飲み込んだ。

フォーマットの激変と戦略

本大会最大のトピックは、GKAが新たに導入した混合フォーマットが極限まで発動し、風の暴力によって競技の性質そのものが4段階に変貌したことである。

初日は7トライ中上位4本のスコアを合算する「100%フリースタイル」で進行したものの、40ノットを超えた2日目朝には「フリースタイル2本+ビッグエア2本」のハイブリッド採点へと移行。さらに風速が上がると「フリースタイル1本+ビッグエア3本」へと比率が変更された。

しかし、45ノットを超える突風の中でアンフックを行うことは自殺行為に近く、ハードクラッシュによる負傷者が続出。ラウンド3のヒート14では、スイス出身のローカルライダーマニュ・デ・フィッファーが激しい着水衝撃で肋骨を痛め、呼吸困難となって戦線離脱する事態が発生した。この危機を受け、ヘッドジャッジのアルヴァロ・オニエヴァは「我々の理念はフリースタイルの要素を残すことだが、多くの負傷者が出ており、何よりライダーの安全を守らなければならない」と決断。ヒート7以降の強風時間帯および後半ラウンドにおいてフリースタイル要件は完全に撤廃され、フリースタイル大会でありながら「100% Pure Big Air(純粋なビッグエアのみ)」で勝敗を決するという歴史的なルール変更が断行された。

この激変に最も巧みに適応したのがフランスのアーター・ギユベールであった。彼は大会中、次のように戦略を語っている。

「2〜3年前からこのフォーマットが導入されることは分かっていたけれど、そのおかげで自分のトレーニング方法も変わったんだ。すでにビッグエアをかなり練習していたから、このコンディションでビッグエアが組み込まれたのは嬉しいよ。ただ、ここまで過酷なコンディションになるとは予想していなかったけどね。」

—アーター・ギユベール

ヒートラダーのいたずらと名勝負

ルールが「純粋なビッグエア」へと切り替わったことで、トーナメント表(ヒートラダー)はフリースタイルの序列を根底から覆す残酷なドラマを生み出した。

第4ラウンドの墓場と王者たちの同時消滅
最大の番狂わせが起きたのはラウンド4のヒート16である。ここには4連覇の絶対王者カルロス・マリオと、2019年世界王者ヴァレンティン・ロドリゲスという2人のフリースタイル世界王者が同組に入る「死の組」が形成された。両者は慣れないビッグエアフォーマットの中で必死にカイトループを応酬したが、3本目にドミニカのロレンツォ・カルカノがカイトループ・バックロールでカルロス・マリオを逆転。さらにヒート中盤まで静かに牙を研いでいたイタリアのジャンマリア・コッコルートが終盤に特大のカイトループを炸裂させてヒート最高得点を奪取し、なんとカルロス・マリオとヴァレンティン・ロドリゲスの新旧世界王者2人が準々決勝を前に同時敗退するという大波乱が起きた。

準々決勝の空中戦
準々決勝ではビッグエアのスペシャリストと若き刺客たちが暴れ回った。南アフリカの鬼才オズワルド・スミスがビーチの観客を熱狂させる特大ジャンプを見せれば、ヒート19ではドミニカ共和国の強豪アデウリ・コルニエルとホセリート・デル・ロザリオが同組で激突。しかし、ここへ割って入った国際大会デビュー戦のルーキージェレミー・ブーランドーがわずか数ポイント差でドミニカ勢2人をまとめてまくって首位通過し、ホセリート・デル・ロザリオの夢を打ち砕いた。
続くヒート20では、前ラウンドで王者たちを沈めたジャンマリア・コッコルートに対し、フランスのポール・セリンとヴァレンティン・ガラットがフロントロール系の高難度ループを浴びせかけて撃破。ヒート21ではエジプトのカリム・マームードが「Kiteloop Double Frontroll」で8.43点を出し、さらに競技エリアを飛び出すほどの「Double Boogie-loop」を決めたものの、ドミニカのポシート・マルティネスが重力を無視したような「Kiteloop Frontroll」で大会最高得点となる「9.70点」を叩き出し、劇的な逆転勝ちを収めた。

準決勝の死闘
第1準決勝では、Red Bull King of the Air出場経験を持つヴァレンティン・ガラットが「Double Frontroll Kiteloop」で先制したが、アーター・ギユベールがそれを上回る高さのダブル・ループで首位を奪取。さらにルーキーのジェレミー・ブーランドーが土壇場で自身の「Double Backroll Kiteloop」の高度を倍増させる驚異的なジャンプを決め、ヴァレンティン・ガラットを振り切って決勝へ進出した。
第2準決勝では、オーストラリアから参戦したユーアン・ジャスパンがダブル・バックロールと「Frontroll Contraloop」の多様性でリードを構築。ドミニカ勢のポシート・マルティネスとアデウリ・コルニエルが猛追し、アデウリ・コルニエルが特大の「Kiteloop Frontroll」でポシート・マルティネスを蹴落として2位に滑り込んだ。

女子部門:砂丘まで飛ぶ8秒の滞空と絶対女王の貫禄
女子部門でも、地元のスペイン勢クラウディア・レオンが滞空時間8秒に迫る特大のカイトループを放ち、ビーチを超えて砂丘の目前に着地するほどのクレイジーなフライトを披露した。準決勝ではイギリスのハンナ・ホワイトリーが終了間際に怒涛のループで女王ミカイリ・ソルに肉薄したが、ミカイリ・ソルは即座にさらなる大技で応戦して首位を死守。
迎えた女子決勝でも、オランダのパワーハウスピッパ・ヴァン・イアーセルが笑顔で特大のカイトループを連発し、地元のリタ・アルナウスやハンナ・ホワイトリーと激突したが、ミカイリ・ソルは「Triple Frontroll Board-off」やブギループを次々と成功させ、20点超えのヒートスコアを連発して完全優勝を飾った。

「レバンテが吹くなんて全く予想していなくて、現地に着いて予報を見た瞬間は『なんてこと、これは大変な大会になりそうね』と思ったわ。でも終わってみれば、ここ最近で一番楽しいヒートになったの。」

—ミカイリ・ソル

大会の詳細結果を表示(ネタバレ注意)

午後8時という日没間際のマジックアワーに突入した男子決勝は、アーター・ギユベール、ジェレミー・ブーランドー、ユーアン・ジャスパン、アデウリ・コルニエルの4名による頂上決戦となった。
序盤はルーキーのジェレミー・ブーランドーが臆することなく大技を連発し、16.97点でリードを奪う展開に。「ブラックパンサー」ことアデウリ・コルニエルは体力を温存して最後に勝負を懸ける戦略を採り、終了間際にモロッコのスカイラインを超えるような特大のブギループ(カイトループ・フロントロール)を放ったものの、バックアップスコアを揃えきれず4位に終わった。ユーアン・ジャスパンはグラブとスピンを織り交ぜた完成度の高いルーティンで3位表彰台を死守。
そして勝負を決めたのは、フランスのアーター・ギユベールだった。16.97点で逃げるジェレミー・ブーランドーに対し、大会最大級の「Kiteloop Board-off」を完璧なスタイルで炸裂させて逆転に成功。フリースタイルとビッグエアの双方で圧倒的な総合力を証明し、見事キャリア初のGKAワールドカップ優勝を成し遂げた(この開幕戦の勝利と準優勝が、のちに最終戦ブラジルでのアーター・ギユベールとジェレミー・ブーランドーによる年間王者決定戦へと直結することになる)。

【男子部門(Men’s Division)】
1位:アーター・ギユベール(フランス)
2位:ジェレミー・ブーランドー(イタリア / スペイン)
3位:ユーアン・ジャスパン(オーストラリア)
4位:アデウリ・コルニエル(ドミニカ共和国)

【女子部門(Women’s Division)】
1位:ミカイリ・ソル(ブラジル)
2位:ピッパ・ヴァン・イアーセル(オランダ)
3位:ハンナ・ホワイトリー(イギリス)
4位:リタ・アルナウス(スペイン)

🔗 関連リンク: GKA Freestyle World Cup Tarifa 2021 | FLIGHT TO THE FINALS – GKA Kite World Tour

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