2021 Cumbuco GKA Freestyle World Cup Brazil

概要

「本当にハッピーだわ。今感じている気持ちを表現する言葉すら見つからない。4度のワールドチャンピオンだなんて、なんてことかしら!この大会でもう一度ダブル・ハンドルパスを決められたことにも最高に興奮しているわ。最初の1本よりもさらに良い出来だったと思うし、女の子たちが本当は何でできていて、どこまでやれるのかをみんなに証明できて本当に嬉しいわ。」

—ミカイリ・ソル

2021年11月11日から14日にかけて、ブラジル北東部セアラー州のクンブコ(Cumbuco)で開催された『2021 Cumbuco GKA Freestyle World Cup Brazil(SuperKite Brasil 2021)』。パンデミックの影響により全2戦の短期決戦となった2021年GKAフリースタイル部門の最終戦であり、年間ワールドチャンピオン決定戦として行われた一戦である。フランスのアーター・ギユベールによる初の年間王者戴冠、15歳の絶対女王ミカイリ・ソルによる女子競技史上初のダブル・ハンドルパス「フロントサイド360」の成功と4連覇達成、さらには怪我から復活した地元の英雄カルロス・マリオによる10点満点の「王の帰還」など、フリースタイル史に残る名場面が次々と生まれた。

開催地と配信機材ロストバゲージの舞台裏

舞台となったのは、世界中のフリースタイラーが冬季トレーニングの拠点とするブラジルの聖地クンブコのドゥーロ・ビーチ(Duro Beach)前である。強い貿易風とインサイドのフラットな海面、そしてアウトサイドに形成される天然のキッカー(波のランプ)が揃い、開幕戦タリファの50ノット暴風ビッグエアとは対照的な「100%純粋なニュースクール・フリースタイル」の舞台が整った。

しかし、大会の裏側では予期せぬトラブルが発生していた。直前のモロッコ大会から大西洋を渡ってブラジル入りしたGKAメディアチームのライブ配信機材一式が、航空会社のロストバゲージにより行方不明となったのである。これにより大会初日と2日目はライブ配信がストップし、3日目の準々決勝からようやく配信が復旧したものの、スローモーション機材やビーチ中継用の音声回線が不足。実況のジョー・シアストゥラがビーチMCとして砂浜へ駆け下りると、放送ブースに残された元プロライダーのフリア・カストロが単独で英語とスペイン語を織り交ぜながら実況を回し、ビーチでの優勝インタビュー音声が配信に乗らない場面を即興で実況解説するなど、手作りのライブ感あふれる中継が繰り広げられた。

全2戦決戦のランキング戦略とタイトルシナリオ

全2戦で争われた2021年シーズンのタイトルシナリオは、開幕戦タリファを制したフランスのアーター・ギユベールと、同2位のルーキージェレミー・ブーランドーの2人を中心に回っていた。
タリファ3位のユーアン・ジャスパンと4位のアデウリ・コルニエルがブラジル戦を欠場したため、実質的な逆転王座の可能性を残していたのはジェレミー・ブーランドー、ドミニカのポシート・マルティネス、フランスのヴァレンティン・ガラットらに限られていた。アーター・ギユベールが自力でタイトルを確定させる条件は「ジェレミー・ブーランドーより上位でフィニッシュすること」、そしてもしジェレミー・ブーランドーが準々決勝で敗退した場合には「アーター・ギユベールが準々決勝のヒートで3位以内に入ること」であった。

一方の女子部門では、開幕戦優勝のミカイリ・ソルを、スペインのリタ・アルナウスとオランダのピッパ・ヴァン・イアーセルが追う展開となっていた。

名勝負と準々決勝に潜んだ運命のいたずら

男子準々決勝の明暗:ジェレミー・ブーランドーの陥落とアーター・ギユベールの「0点からの戴冠」
大会3日目の男子準々決勝で、タイトルレースは劇的な結末を迎えた。
まず準々決勝ヒート1では、地元クンブコの大歓声を背に受けた4度の世界王者カルロス・マリオが登場。前年の怪我とパンデミックにより長らくツアーを離れていた絶対王者は、初手から「スリム7」を完璧にメイクし、地元の若手ギェルメ・コスタやベテランのポシート・マルティネスを抑えてマノエル・ソアレスと共に30点超えのハイスコアで準決勝へ一番乗りを果たした。
波乱が起きたのは続く準々決勝ヒート2である。逆転での年間王者を狙うランキング2位の16歳ジェレミー・ブーランドーと、2019年世界王者ヴァレンティン・ロドリゲスが同組に入ったが、ブラジルのローカル勢カルロス・マグノとコロンビアのファン・ロドリゲスが爆発。ジェレミー・ブーランドーはチョップに阻まれてスコアを伸ばせず3位に沈み、ヴァレンティン・ロドリゲスも4位で敗退。タイトル挑戦者筆頭のジェレミー・ブーランドーが準々決勝で姿を消した。

これにより、準々決勝ヒート4に登場したアーター・ギユベールには「この4人ヒートで3位以内に入ればその場で年間ワールドチャンピオン確定、ただし最下位(4位)になれば敗退したはずのジェレミー・ブーランドーが逆転で年間王者になる」という極限のプレッシャーが懸かった。
同組にはスイスのマクシム・シャブロー、イタリアのマッテオ・ドロティーニ、ブラジルのマテウス・メンデスという強豪が揃う中、アーター・ギユベールは重圧からか最初の第1トリックでクラッシュし「0点」という最悪のスタートを切った。しかし、ここで崩れないのが彼の真骨頂だった。続く第2トリックでいきなり超高難度の「フロントサイド 319」を完璧に着地させて「8.10点」を叩き出し、さらに中盤のミスも第5トリックの「スリム7(7.40点)」でリカバリー。最終第7トリックで4位のマテウス・メンデスが逆転に必要な7.30点のKGBを失敗した瞬間、アーター・ギユベールの3位以上と「2021年GKAフリースタイルワールドチャンピオン」が確定した(さらにアーター・ギユベールはウイニングランとなった最後の1本で逆転し、マクシム・シャブローに次ぐ2位で準決勝進出も決めた)。

「最初のトリックで0点を叩いてしまったのに、彼は『オーケー、僕は禅の境地だ、慌てたりしないぞ』とでも言うように冷静さを保ち、2本目のトライでいきなり8.1点を叩き出したわ!…準々決勝のヒート中にワールドチャンピオンが誕生するなんて、本当にユニークな光景ね!」

—フリア・カストロ

女子準決勝の衝撃:世界タイトル合計9冠の「チャンピオンズ・ヒート」と女子史上初の317
女子部門では、15歳の女王ミカイリ・ソルが異次元の領域へと足を踏み入れていた。大会2日目のラウンド2において、長年女子フリースタイル界の壁とされてきた「大会ヒートでのダブル・ハンドルパス」についに挑み、女子競技史上初となる「フロントサイド360(フロントサイド720度回転+2回のハンドル・パス)」を成功させたのである。
さらに準決勝では、歴史的な組み合わせが実現した。準決勝ヒート1では、最終第7トリックでピッパ・ヴァン・イアーセルが「バック・トゥ・ラップト」でクラッシュした隙を突き、スウェーデンのナタリー・ランブレヒトがキャリア初のファイナル進出を果たしてビーチで嬉し泣きを見せた(1位通過はリタ・アルナウス)。
そして続く準決勝ヒート2には、3連覇中の女王ミカイリ・ソル、3度の世界女王ブルーナ・カジヤ、さらに2016年の世界タイトル獲得以来5年ぶりにフリースタイル競技へ電撃復帰したポーランドの3冠女王カロリーナ・ウィンコフスカが集結(もう1人はオーストラリアのケイティ・ポッター)。「1つのヒートに合計9つの世界タイトルが存在する」という前代未聞のチャンピオンズ・ヒートとなったが、ミカイリ・ソルが9.13点を含む27.60点で圧勝し、伝家の宝刀である超インバートした「スリムチャンス」や「フロント・トゥ・ブラインド」を決めたカロリーナ・ウィンコフスカがブルーナ・カジヤを抑えて5年ぶりの復帰戦で決勝への切符を掴み取った。

大会の詳細結果を表示(ネタバレ注意)

最終日、まず行われた女子グランドファイナル(ミカイリ・ソル、リタ・アルナウス、カロリーナ・ウィンコフスカ、ナタリー・ランブレヒト)では、タイトル確定には3位以上(リタ・アルナウスが優勝した場合はそれ以上)が必要だったミカイリ・ソルが、まったく守りに入らない圧巻の演技を披露した。
リタ・アルナウスが9.0点の「ハートアタック」で最後まで食らいつき、カロリーナ・ウィンコフスカもウェイクボードスタイルのパワフルなパスで魅せたが、ミカイリ・ソルは最終第7トリックで再びダブル・ハンドルパスの「フロントサイド360」を完璧にメイクして「10点満点」を獲得。さらに9.0点、7.1点、6.8点を揃えて他を圧倒し、4年連続となるGKAフリースタイルワールドチャンピオンと大会優勝を同時に手中に収めた。また、5年ぶりの復帰戦となったカロリーナ・ウィンコフスカも堂々の3位表彰台に立った。

一方、男子準決勝ヒート1では、復活の王者カルロス・マリオとブラジルのエリック・アンダーソンが、新世界王者アーター・ギユベール(「319」などをメイクするも3位敗退)とモーリシャスのルカ・ピトーを下して決勝へ進出。日没順延を経て翌朝に行われた準決勝ヒート2では、スイスのマクシム・シャブローとブラジルのマノエル・ソアレスが、わずか0.3点差の接戦でイタリアのジャンマリア・コッコルートとコロンビアのファン・ロドリゲスを振り切って勝ち上がった。

迎えた男子グランドファイナルは、カルロス・マリオ、エリック・アンダーソン、マノエル・ソアレスのブラジル勢3名に、スイスのマクシム・シャブローがたった1人で立ち向かう「3対1のブラジリアン・スタンドオフ」となった。
奇しくも前年の『SuperKite Brazil 2020』男子決勝でも、マクシム・シャブローはまったく同じブラジル勢2名(エリック・アンダーソン、マノエル・ソアレス)とコロンビアのファン・ロドリゲスという南米勢3名に囲まれながら、最終トリックで「10点満点のGrabbed Back Mobe 7」を叩き出して優勝をさらっていた。しかし2021年のこの決勝には、前年に不在だった「クンブコの王」カルロス・マリオが加わっていた。
序盤はマノエル・ソアレスが1本目に特大の「ハートアタック7」を決めて会場を沸かせ、エリック・アンダーソンもスタイリッシュなグラブ入り「KGB 5」や「スリム7」で応戦。対するマクシム・シャブローはただ1人「バックモブ7」を成功させ、4本すべてを7.7点以上で揃えて首位を奪い、ブラジル2連覇を目前に捉えた。
しかしクライマックスは、絶対王者カルロス・マリオの最終アテンプトに待っていた。首位マクシム・シャブローを追うカルロス・マリオは、極限のスピードからキャリア最高峰とも言える完璧な「ハートアタック7」を炸裂させ、ジャッジ全員一致の「10点満点」を獲得。前年と立場を逆転させる劇的な10点満点でマクシム・シャブロー(最終トライで8.58点が必要となるも届かず2位)を土壇場で差し切り、地元クンブコの大観衆の前で涙の復活優勝(「Return of the King」)を成し遂げた。

「ここスーパーカイト・ブラジルでチャンピオンタイトルを獲れて本当に幸せだ。神様と、ここビーチに来てくれたすべての人に感謝したい。絶大なサポートをしてくれたスポンサーのみんなにも感謝しているよ。俺は戻ってきた、神に感謝だ。来年もまたツアーの舞台に立つよ!」

—カルロス・マリオ

なお、本戦終了後には男女混合の特別競技「Super Trick(ベストトリック・セッション)」も開催され、本戦決勝で惜敗したマクシム・シャブローが「9.27点」のビッグトリックを叩き出して見事優勝を飾った。

【男子部門(Men’s Division)】
1位:カルロス・マリオ(ブラジル)
2位:マクシム・シャブロー(スイス)
3位:エリック・アンダーソン(ブラジル)
4位:マノエル・ソアレス(ブラジル)
※Super Trick(ベストトリック)優勝:マクシム・シャブロー(9.27 pts)

【女子部門(Women’s Division)】
1位:ミカイリ・ソル(ブラジル)※2021年年間ワールドチャンピオン確定
2位:リタ・アルナウス(スペイン)
3位:カロリーナ・ウィンコフスカ(ポーランド)
4位:ナタリー・ランブレヒト(スウェーデン)

【2021年GKAフリースタイル年間最終ランキング トップ5】
・男子:1位 アーター・ギユベール / 2位 ジェレミー・ブーランドー / 3位 カルロス・マリオ / 4位 ポシート・マルティネス / 5位マクシム・シャブロー
・女子:1位 ミカイリ・ソル / 2位 リタ・アルナウス / 3位 ピッパ・ヴァン・イアーセル / 4位 ナタリー・ランブレヒト / 5位ブルーナ・カジヤ

🔗 関連リンク: GKA Freestyle World Cup Cumbuco | Super Kite Brazil | The Finals – GKA Kite World Tour

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