概要
「アンドレアのこのダーティ・ループを見ろよ…これはエグい(dirty)ぞ、兄弟。しかもフィンで(ボードオフ)。エグかったぞ、グラハム。グラハムならこれを大喜びしたはずだ。今日はグラハムのために解き放つ、それこそがすべてなんだ。」
— ルイス・クラザーン & ルーベン・レンテン(実況席にて)
2025年9月、オランダのノールトウェイク(Noordwijk)で開催された「Red Bull Megaloop 2025」は、カイトサーフィン界で最も過激なビッグエアコンテストとして歴史に刻まれる大会となった。世界中から集まったトップライダーたちが北海の荒波を舞台に極限のジャンプを競い合った本大会は、史上初となるウィメンズ(女子)部門の新設、そしてカイトシーンに多大な影響を与えた亡きカリスマへの追悼という、ドラマと熱気にあふれた一戦となった。
開催地と過激すぎるコンディション
会場は前回のザンドフォールトから、大会の創設者の一人であるルーベン・レンテンのホームゲレンデ、ノールトウェイクへと移転した。北海の荒れ狂う暴風雨により、選手や観客は飛んでくる砂を防ぐためにゴーグルを着用するほどの砂嵐(Mayhem)に見舞われた。青空が見えたかと思えば巨大な黒い雨雲(Black cloud)が押し寄せて風向きと風速が激変する、メガループを真に象徴する極限の自然環境下で行われた。
フォーマットと特別ルール
本大会は通常と異なる過酷なフォーマットが採用された。「たった1発のメガループ勝負(One Trick Counts)」というルールのもと、1ヒートの中で放った最も過激なメガループ1発のスコアだけで勝敗が決まる。審査基準は「高さと過激さ(Height and Extremity)」が70%、「テクニカル(Technicality)」が30%と、一切のごまかしが利かない。
さらに、男子部門ではカイトラインを18メートルのショート・ラインに制限。これによりカイトの回転軌道が低くなり、よりエグい水平引っ張り(ヤンク)と爆発的な高度を生み出すルールが適用された(女子はライン長自由)。
レディース部門の「歴史的初開催」と激闘ドラマ
最大のハイライトは、レッドブル・メガループ史上初となる「女子部門」の正式創設である。
- 初代女王への道: 地元オランダのザーラ・フーゲンラード(Zara Hoogenraad)は、空中でカイトのテンションを失い水面に猛スピードで叩きつけられる恐怖の大クラッシュ(bombing out)を喫しながらも立ち上がり、圧巻のブギループで見事逆転。初代メガループ女王の座に輝き、パートナーであるヒール・フルーフトらとビーチで感涙を流し合った。
- 波乱の展開: 本命視されていたKing of the Air王者のフランチェスカ・マイニが激しい大クラッシュに見舞われ上位進出を逃すなか、アレッサ・メンシュ(ドイツ)が安定したメガループ・ディレイドバックロールを決め2位表彰台を獲得した。
「本当に最高よ。カイトサーフィンで最も過激な大会だから、女性として参加できることにすごく興奮しているわ。」
— ザーラ・フーゲンラード(大会直前のコメント)
メンズファイナル:極限の一撃勝負
ディフェンディングチャンピオンのアンドレア・プリンチピ、数々のビッグエアタイトルを総なめにしながらメガループ初戴冠を狙うロレンツォ・カサーティ、そして地元オランダの誇りを胸に戦うコーハン・ファン・ダイク(Cohan van Dijk)らが激突し、息を呑む三つ巴の激戦となった。
1発のメガループのみで競われる極限のフォーマットのなか、アンドレアは極低空の「ダーティ・ループ」や「ロデオ」などハードコアなトリックを連発。8.60というハイスコアをマークし、王者の意地を見せつけてハイレベルな勝負を繰り広げる。
名言・裏話(グラハム・ハウズとDirty Habits)
大会の背景には、2025年9月に他界した「Dirty Habits」の創設者、グラハム・ハウズへの深い追悼とリスペクトが存在していた。
- ルーベンが掲げた旗: 大会中、ルーベン・レンテンがビーチでDirty Habitsのフラッグを高く掲げ、コミュニティ全体で彼を偲ぶ伝説的なシーンが生まれた。
- ダーティ・ループ(Dirty Loop)の誕生: グラハムへの最大の功績称賛として、従来「コントラ・ループ(フロントハンドで引く逆回転ループ)」と呼ばれていた大技が、彼に敬意を表し「ダーティ・ループ」という正式名称でツアー全体に定着することになった。
大会公式のトリビュートでは、彼が遺したスピリットが全世界に向けて語られた。
「グラハムは失敗を燃料に、ワイプアウトを勝利に、そしてすべてのクラッシュを語る価値のあるストーリーへと変えた。今日、明日、そしてそれ以降の毎日、私たちは彼を称える。…だからメッセージを送ろう。進み続けろ、クラッシュし続けろ、何度でも立ち上がれ、生きていることを実感し続けろ。」
大会の詳細結果を表示(ネタバレ注意)
「言葉にならないよ、あまりにクレイジーだ。ずっと欲しかったものを手に入れたんだと思う、信じられないよ。正直、最初に言いたいのはこの勝利をグラハムに捧げたいということだ…」
— ロレンツォ・カサーティ
アンドレアやコーハンとの拮抗を完全に打ち破ったのは、ロレンツォの驚異的な一撃だった。カイトが完全に下を向くほど極端にインバート(倒立)した姿勢から、4回のバックロールとボードオフを組み合わせるという異次元のトリックをメイク。実況席から「Bangst!(オランダ語で『最も恐ろしい・最もビビる』を意味する形容詞の最上級)」と称賛されるこの一撃で、この日全体の最高得点となる「9.04」を叩き出し、激闘に終止符を打った。
男子ファイナル
- 優勝: ロレンツォ・カサーティ(Lorenzo Casati) — 9.04点(悲願のメガループ初戴冠)
- 2位: アンドレア・プリンチピ(Andrea Principi) — 8.60点
- 3位: コーハン・ファン・ダイク(Cohan van Dijk) — 8.06点
女子ファイナル
- 優勝: ザーラ・フーゲンラード(Zara Hoogenraad / オランダ) — 7.14点(初代メガループ女王)
- 2位: ナタリー・ランブレヒト(Nathalie Lambrecht / スウェーデン) — 5.62点
- 3位: アレッサ・メンシュ(Alessa Mensch / ドイツ) — 5.38点
なお、本大会で見事3位に食い込んだコーハン・ファン・ダイクは、この結果によりRed Bull King of the Air 2025への出場権を獲得。2025 KOTAファイナリストのCohanは、このメガループの激闘を皮切りに、さらなる飛躍を遂げることとなる。
🔗 関連リンク: https://www.redbull.com/us-en/events/red-bull-megaloop-2025
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