Finn Flügel (フィン・フリューゲル)

「とにかく水の上にずっといるのが大好きなんだ。風が強かろうが弱かろうが関係ない。どのディシプリンでも、海に出てただ楽しむことがすべてさ」

—フィン・フリューゲル

概要

フィン・フリューゲル(Finn Flügel)は、2009年7月16日生まれ、ドイツ・バイエルン州ホーフ出身のプロカイトボーダーである。幼少期に家族とともにエジプトの紅海沿岸エル・ゴウナ(El Gouna)へ移住し、年間を通して風が吹く最高の環境で育った。ツインチップのフリースタイルとビッグエア、さらにはハイドロフォイル・ビッグエアやウィングフォイルまであらゆる種目を世界トップレベルでこなす次世代の「コンプリート・ウォーターマン」であり、2025年には16歳にしてGKAフリースタイル・ワールドチャンピオンに輝いた。

キャリア

ドイツの老舗ボードスポーツブランド「F2(Fun & Function)」のオーナー社長である父ベルント・フリューゲル(Bernd Flügel)のもと、幼少期からマリンスポーツやウィンタースポーツが身近にある恵まれた家庭環境で育った。6歳でエジプトの現地インストラクターであるイスラム・アリ(Islam Ali)の手ほどきを受けて初めてカイトボードに立ち、10歳の時にはカイトサーフィンを単なる趣味ではなく自身の未来にすると決意してエジプト・エル・グーナへの本格移住を実現させた。2021年からコンペティションへの参戦を開始すると、わずか13歳だった2022年にはGKAワールドツアーにデビューし、同年の「GKA Rookie of the Year(最優秀新人賞)」を受賞して一躍脚光を浴びた。

2024年にはU16フリースタイル世界タイトルとドイツ選手権を制すると、シーズン最終戦のGKAフリースタイル・カタール大会でシニアツアー初優勝を達成。さらに同年のブラジル・ジェリコアコアラ大会では、ツインチップ・ビッグエアとハイドロフォイル・ビッグエアの両部門で同時に3位表彰台に立つ離れ業を見せた。

そして2025年シーズン、11月にブラジル・タイバ(Taíba)で開催されたGKAフリースタイル最終戦では、大会期間を通じてわずか1度のクラッシュのみという驚異的な安定感を披露。マクシム・シャブロー(Maxime Chabloz)やジャンマリア・コッコルート(Gianmaria Coccoluto)ら歴代王者がひしめく決勝の最終盤に、超大技「KGB 9」を完璧にメイクして逆転優勝を飾り、16歳にして初のGKAフリースタイル年間ワールドチャンピオンに輝いた。また、同年のハイドロフォイル・ビッグエア部門でも年間準優勝(バイス・ワールドチャンピオン)、U19ビッグエア世界選手権では優勝を果たすなど、ユースとシニアを合わせて通算6度の世界タイトルを獲得している。

ストラップ・フリースタイル革命とマルチカテゴリーでの飛躍

彼の最大の技術的特徴は、現代のフリースタイル競技において事実上の標準装備となっている固定式の「ブーツ(ウェイクスタイル・バインディング)」を使わず、ビッグエアと同じ「フットストラップ」を装着してフリースタイルを戦う点にある。

キャリア初期はブーツを着用していたが、2022年のブラジル遠征中に踵(かかと)を負傷してブーツが履けなくなった際、痛みが出ないストラップに切り替えて練習を続けたことが転機となった。「ストラップの方がはるかに自由を感じられたし、25ノット以上の強風下でKGB 9やバックサイド9のような大技に挑んで激しくクラッシュしても、足がストラップから抜けるから怪我を恐れずに攻められる」と語る通り、彼はストラップのままトリプルハンドルパスや「クロウ・モブから着水と同時にブラインド・ハートアタック5へ繋ぐコンボ」など前人未到のトリックを次々と開拓。足首の柔軟性を活かしたグラブやボードオフの要素を融合させ、フリースタイル界に新たな潮流を生み出した。

その卓越した空中感覚と柔軟なボディコントロールはビッグエアでも遺憾なく発揮されており、「シャーク・アタック・ダブルフリップ(Shark Attack Double Flip)」や、空中で外したボードを背中の後ろで回して再キャッチする「ボードフリップ・オズモシス(Board Flip Osmosis)」など、最高難度のボードオフ・コンビネーションを武器とする。また、他人の動きを見て即座に自分のものにする天才的な習得力でも知られ、ハイドロフォイルの絶対王者シャルル・ブローデル(Charles Brodel)が「ボードが重く肩への負担も大きいため極めて困難」と語っていたフォイルでの大技「トルネード(Tornado)」の映像を見た翌日に海へ出て、わずか2トライでメイクしてしまった逸話はプロ仲間の間でも語り草となっている。

スポンサー・所属ブランド

苗字の「Flügel」がドイツ語で「翼」を意味することから、2024年末にRed Bullアスリート契約を結んだ際には「生まれながらにして翼を持った男」として大きな話題を呼んだ。

カイトブランドの遍歴においては、キャリア初期のCOREからAirushを経て、2024年末に業界最大手のDUOTONE(デュオトーン)へ移籍。一方で、彼は「自分が乗りたいギアに一切妥協しない自由人」としても知られており、Airush在籍時にALUULA素材のビッグエア機を求めて大会でDuotoneのカイトを使用したり、Duotone移籍後も弱風時のビッグエアやハイドロフォイル競技ではFlysurfer(フライサーファー)のフォイルカイト「Sonic」を実戦投入したりと、ブランドの垣根を超えた機材選択でも度々注目を集めている。実家がボードスポーツメーカー(F2)を経営しているという経済的・環境的な後ろ盾もあり、単一ブランドの契約条件に縛られることなく「勝つために最適な機材」を最優先できる独自のポジションを築いている。普段のメインウェポンとしては、Duotoneの「Rebel D/LAB」や「Evo D/LAB」を使用している。

パーソナリティと交友関係

父親がボードスポーツブランド「F2」のオーナー社長ということもあり、両親は彼のキャリアを全面的にバックアップしており、多部門にわたる世界中のツアーへ年間を通して家族で同行している。13歳でワールドツアーを回り始めた頃からは、カイトボーダーでもある家庭教師が遠征に同行し、ビーチや滞在先で勉強を続けながら学業とプロ活動を両立してきた。コーチを務めるフランスのニコ・デルマス(Nico Delmas / Seven Seas Coaching)とはフリースタイルを始めた初期から深い信頼関係にあり、大会でのヒート戦略やメンタル面のサポートを受けている。

また、同世代のドイツ人ライダーであるマルテン・コブリシュケ(Marten Koblischke)とは、幼少期にドイツ国内の小さなフリースタイル大会で共にキャリアをスタートさせ、ビーチでフリスビーなどをして遊んでいた幼馴染である。世界最大のカイト市場でありながら長らく男子の世界王者が不在だったドイツにおいて、彼とマルテンはドイツのカイトシーンを牽引する新たなアイコンとして熱狂的な支持を集めている。同世代のレオナルド・カサーティ(Leonardo Casati)やヒューゴ・ウィグルスワース(Hugo Wigglesworth)らとは、ビッグエアとフォイルの両部門でしのぎを削る良きライバル関係にある。

名言・エピソード

「夢みたいで、今はまだ現実とは思えないよ。言葉が見つからないくらいクレイジーな気分さ」

— フィン・フリューゲル(2025年ブラジル・タイバ大会で初のフリースタイル世界王者に輝いた直後のインタビューにて)

「前にもブーツを履いていたことはあるんだけど、2022年にブラジルへ行った時に踵を痛めてブーツが履けなくなったんだ。それでただ海に出たくてストラップを使い始めたら、すごく自由で楽しくて、どんなトリックに挑戦してクラッシュするのも怖くなくなった。トリプルパスもすべてストラップでロック解除できたし、僕にとっては大きなアドバンテージになっているよ」

—フィン・フリューゲル

大会結果

・2022年:GKAアワード「Rookie of the Year(最優秀新人賞)」受賞(13歳)
・2024年:GKA Youth Freestyle World Championships (U16) 優勝 / ドイツ選手権 優勝
・2024年:GKA Big Air World Cup Brazil (ジェリコアコアラ) ツインチップ部門 3位 / ハイドロフォイル部門 3位
・2024年:GKA Freestyle Kite World Cup Qatar 優勝(シニアツアー初優勝)
・2025年:GKA Youth Kite World Championships (U19) ビッグエア優勝 / フリースタイル準優勝
・2025年:Red Bull Winds of Sinai(エジプト) 優勝
・2025年:GKA Hydrofoil Big Air World Championship 年間準優勝(バイス・ワールドチャンピオン)
・2025年:GKA Freestyle Kite World Cup Taíba 優勝(2025年フリースタイル・ワールドチャンピオン)

最新の大会結果を表示(ネタバレ注意)

・2026年:Lords of Tram GKA Big Air Kite World Cup 準優勝(決勝で7平米のフォイルカイト『Flysurfer Sonic』を投入して高さ17.9mのShark Attack Double Flipを決めた後、2本目のクラッシュでカイトが泥にスタックするも、全力疾走でビーチへ戻りエドガー・ウルリックから予備のDuotone『Rebel D/LAB』を受け取る決死のカイト交換を敢行。終了間際に再び特大のShark Attack Double Flipを叩き込んで準優勝に輝いた)
・2026年:GKA Freestyle Kite World Cup Mexico (ヌエボ・ナヤリト) 優勝 / ドイツ(ボルクム島) 3位(ランキング首位タイにつけるも、肩と肘の炎症および台湾KOTA予選優先のためブラジル最終戦を欠場し年間総合5位)
・2026年:GKA Youth Twintip Kite World Championship (St. Peter-Ording) U19 優勝
・2026年:Defender GKA Kite World Cup Sylt(ハイドロフォイル・ビッグエア世界選手権) 準優勝(2年連続バイス・ワールドチャンピオン)
・2026年:Red Bull King of the Air Qualifier Taiwan(台湾・新竹) 準優勝(本戦出場権獲得)

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