概要
「コンディションはかなり良いよ。何より海面がフラットなのが最高だね。風は少しガスティな時間帯もあるけれど、このフラットな水面がすべてをカバーしてくれるんだ。」
2022年10月18日から23日にかけて、サウジアラビア北西部の紅海沿岸に位置する未来都市ネオム(Neom)で開催された『2022 Qatar Airways GKA Freestyle-Kite World Cup Neom』。2022年GKAフリースタイル・ワールドツアー(全3戦)の第2戦であり、サウジアラビア史上初めて開催されたGKA公式ワールドカップである。総合スポーツ祭典「NEOM Beach Games 2022」のオープニング競技として実施され、透き通ったターコイズブルーのフラット海面と20〜30ノットの強風のもとで、最終戦ブラジルに向けた重大なタイトルレースと特別エキシビションのビッグエア戦が繰り広げられた。
開催地・コンディションと「NEOM Beach Games 2022」
初開催の舞台となったネオムは、アカバ湾と紅海が交わるサウジアラビア北西部に位置し、海を挟んだ対岸にはエジプトのシナイ半島を望むロケーションである。かねてよりカイトボーディングの聖地として知られるエジプト(エル・グーナ等)と同様の貿易風ベルトに属しており、連日午前中から25〜30ノットの強風が吹き抜け、午後にかけて20〜25ノットの理想的なフリースタイル・コンディションへと落ち着くサイクルを見せた。
また、本大会は5つの国際競技(カイトサーフィン、トライアスロン、3×3バスケットボール、ビーチサッカー、マウンテンバイク)が集結した「NEOM Beach Games 2022」の幕開けを飾るイベントとして開催された。世界中から集まった選手たちは専用の「アスリート・ビレッジ(選手村)」に滞在し、異競技のトップアスリートたちと交流しながら4日間連続の競技に挑んだ。
フォーマットと注目選手
本戦は1ヒート7トライのうち上位4本のトリック合算(40点満点)で競う「100% Pure Freestyle」フォーマットで争われた。さらに最終日(Day 4)の午前中には、30ノットの強風を活かした特別エキシビション「Big Air Special Event(5トライ中上位2本のスコア合算)」も急遽開催された。
男子部門には、開幕戦コロンビアでツアー初優勝を飾りながらも、この時点ではまだメインのカイトスポンサーが付いておらず、タイトルスポンサーであるカタール航空の航空券サポート(ドーハの新施設Fuwairit Kite Beach経由)を受けて参戦を実現させたブラジルのマノエル・ソアレスを筆頭に、前年度世界王者アーター・ギユベール、4度の世界王者カルロス・マリオ、スイスのマクシム・シャブロー、イタリアのジャンマリア・コッコルート、コロンビアのファン・ロドリゲスや2019年王者ヴァレンティン・ロドリゲス、大胸筋腱断裂の大怪我から復帰したフランスのヴァレンティン・ガラットらが参戦。さらにカタールのラシド・アル・マンソーリやエジプトのハムザ・ナッサルら中東・北アフリカ勢も出場した。
12名で争われた女子部門には、絶対女王ミカイリ・ソル、3度の世界女王ブルーナ・カジヤ、スペインのリタ・アルナウスとクラウディア・レオン、スウェーデンのナタリー・ランブレヒト、そして怪我から復帰したイタリアの元世界ランキング2位フランチェスカ・バニョーリらが集結した。
ハイライト・名勝負
1. 強風のサバイバルとなった序盤戦と、ベテランブルーナ・カジヤ・新鋭ナタリー・ランブレヒトの輝き
競技初日・2日目は、朝から25〜30ノットの強風が吹き荒れるタフな幕開けとなった。
男子ラウンド3および準々決勝(ラウンド5)では、ジャンマリア・コッコルートが「KGB7(8.77点)」や「KGB5(8.03点)」で31点超えのハイスコアを叩き出し、マクシム・シャブローも革新的な「ダブル・ハーフキャブ・モブ」を披露。さらに準々決勝の最終ヒート(ヒート4)では、カルロス・マリオが8.10点の「ハートアタック7」と7.83点の「スリム7」を揃えて30.83点で1位通過を果たし、ドミニカのルイス・アルベルト・クルズと共に準決勝へ進出した(同組で2019年王者ヴァレンティン・ロドリゲスが敗退)。
一方、強風の午前中に行われた女子の序盤ラウンドでは、ベテランのブルーナ・カジヤが経験値の高さを発揮。手持ちの最小カイトでもオーバーパワーとなる強風の中で最終トリックをねじ込み、7.83点の「Crow Mobe(クロウ・モブ)」や「Pete Rose(ピート・ローズ)」などトー・サイドの大技を連発したスウェーデンのナタリー・ランブレヒトと共に、0.3点差の名勝負を演じた。
「今は喜びで胸がいっぱいで、ようやく身体の震えが収まってきたところよ。自分が乗っていたカイトのサイズに対して風が強すぎたんだけど、それより小さいカイトを持っていなくて、ヒート中ずっと格闘していたの。最終トリックでどうしてもスコアが必要だったからすべてを懸けて突っ込んだら、最高にラジカルな1本が決まったわ。」
—ブルーナ・カジヤ
2. 30点超えが続出した男子準決勝と、女子の「スペイン2名 対 ブラジル2名」決勝進出
夜間の降雨の影響で早朝から強風が吹いた大会3日目(Day 3)は、風が適度に落ち着いたタイミングで男女の準決勝が行われた。
男子準決勝ヒート1では、好調のコロンビア代表ファン・ロドリゲスが高さとパワーを兼ね備えたトリックを連発し、31.60点で1位通過。2位には29.86点のジャンマリア・コッコルートが入り、ルイス・アルベルト・クルズ(28.13点)とマッテオ・ドロティーニ(17.20点)を退けた。
続く男子準決勝ヒート2は、出場4名全員がワールドクラスの大技を応酬する今大会屈指のハイレベルなヒートとなった。前年度王者アーター・ギユベールが開幕戦早期敗退の鬱憤を晴らすかのように、大会最高ヒートスコアとなる「33.97点」を叩き出して1位通過。開幕戦覇者のマノエル・ソアレスもグラブを入れた「フロント・ブラインド・モブ」などを決めて「33.20点」で2位に食い込み、31.94点を出しながらも3位に終わったマクシム・シャブローと、4位カルロス・マリオ(28.67点)がここで姿を消した。
女子準決勝では、ヒート1でブルーナ・カジヤが26.16点をマークして2日連続となる女子最高ヒートスコアで1位通過し、2位にスペインのリタ・アルナウス(22.56点)が入った。ヒート2では女王ミカイリ・ソル(22.58点)とスペインのクラウディア・レオン(20.07点)がナタリー・ランブレヒト(18.37点)を下して勝ち上がり、決勝は「スペイン勢2名(クラウディア・レオン、リタ・アルナウス)対 ブラジル勢2名(ミカイリ・ソル、ブルーナ・カジヤ)」の真っ向勝負となった。
大会の詳細結果を表示(ネタバレ注意)
「なんてこと、今は本当に言葉が出てこないわ。この瞬間をずっと待ち続けてきたし、良い時も悪い時も私を支えてくれた家族とともに猛練習を重ねてきたから、この勝利を家族に捧げます。そして一緒に戦った女子選手のみんなも本当に素晴らしかった、あなたたちは私の誇り高いヒーローよ!」
—クラウディア・レオン
■ 最終日午前:特別エキシビション「Big Air Special Event」
最終日(Day 4)の朝は30ノット近い強風が吹き込んだため、フリースタイル決勝に先立って特別企画のビッグエア・コンペティションが開催された。
4名で行われた女子ビッグエア決勝では、ハワイのカーリー・トーマがリードしていたものの、6月のビッグエア世界選手権で3位に入賞していたスウェーデンのナタリー・ランブレヒトが9.00点の特大メガループを含む逆転劇を見せて優勝を飾った(2位カーリー・トーマ、3位アレハンドラ・トレス、4位ネス・バルビノ)。
16名が参加した男子ビッグエア部門では、怪我から復帰したフランスのヴァレンティン・ガラットが高高度のカイトループを連発して圧勝。2位にドミニカのポシート・マルティネス、そして3位には対岸の母国から駆けつけたエジプトのハムザ・ナッサルが入り、地元中東・北アフリカのサポーターを大いに沸かせた。
■ 男子フリースタイル決勝:マノエル・ソアレスが開幕2連勝で王座に王手
風がフリースタイルに適した強さへと落ち着いた午後、いよいよ本戦のファイナルが幕を開けた。
男子グランドファイナル(マノエル・ソアレス、アーター・ギユベール、ジャンマリア・コッコルート、ファン・ロドリゲス)では、準決勝で33点台を出したアーター・ギユベールと、1本目から攻めたジャンマリア・コッコルートが中盤にミスを混ぜて伸び悩む中、ブラジルのマノエル・ソアレスが驚異的な安定感を発揮した。4本目のトライでこのヒート最高得点となる「8.73点のハートアタック7」を完璧に着地させて独走態勢を築くと、計4本をクリーンに揃えてトータル「31.43点」をマーク。
終盤にはアーター・ギユベールが最終トリックで6.07点を加えてトータル27.94点とし、ジャンマリア・コッコルート(27.19点)をわずか0.75点差でかわして準優勝を確保した(4位は13.17点のファン・ロドリゲス)。
メインスポンサーを持たないまま出場したマノエル・ソアレスが開幕戦コロンビアに続く無傷の2連勝を達成。これにより、次戦(最終戦ブラジル・タイバ大会)で「準決勝進出(ベスト8入り=5位タイ〜7位タイ以上)」を果たせば他選手の成績にかかわらず自力で初の年間ワールドチャンピオンが確定し、仮に準々決勝敗退(9位タイ以下)に終わった場合でも、ジャンマリア・コッコルートやファン・ロドリゲスら上位陣が大会で優勝しない限りマノエル・ソアレスが王座を手にするという絶対的優位な立場で母国での最終決戦へ向かうこととなった。
「コロンビアの時から大きな自信を持っていたけれど、ここでもとにかくベストを尽くして、心から楽しみながら乗ることができたよ。ここアラビアの地で再びチャンピオンになれて本当に幸せだ。ビーチで応援してくれたみんなと、いつも支えてくれるブラジルの仲間たちに感謝したい。」
—マノエル・ソアレス
■ 女子フリースタイル決勝:クラウディア・レオンが0.74点差で絶対女王を破り悲願の初優勝
大会の最後を飾った女子グランドファイナル(クラウディア・レオン、ミカイリ・ソル、リタ・アルナウス、ブルーナ・カジヤ)では、歴史的な大番狂わせが待っていた。
準決勝まで最高得点を連発していたブルーナ・カジヤは、2本目のトライでクラッシュした際にリーシュが外れてカイトをロストするアクシデントに見舞われ、小さいカイトへの交換を余儀なくされて18.10点の4位に沈んだ。
一方、1本目から「バックサイド313」を決めてリズムに乗ったスペインのクラウディア・レオンは、勝負の分かれ目となった4本目のトライで、アウトサイドで完璧な「S-Bend to Blind(Sモブ:7.10点)」を叩き出して単独首位に浮上。さらに審査員席の目の前でグラブを入れた「スリムチャンス」も成功させ、トータル「24.87点」をマークした。
追う絶対女王ミカイリ・ソルは、最終トライで非常にクリーンな「ヒンターバーガー・モブ5」を成功させて逆転を狙ったが、トータル「24.13点」でわずか「0.74点」届かず2位。しかし、敗れたミカイリ・ソルをはじめとするファイナリスト全員が駆け寄ってクラウディア・レオンの悲願のGKAツアー初優勝を心から祝福する感動的なフィナーレとなった(3位は20.97点のリタ・アルナウス)。
【男子フリースタイル部門 最終結果(Men’s Freestyle)】
1位:マノエル・ソアレス(ブラジル)— 31.43 pts
2位:アーター・ギユベール(フランス)— 27.94 pts
3位:ジャンマリア・コッコルート(イタリア)— 27.19 pts
4位:ファン・ロドリゲス(コロンビア)— 13.17 pts
【女子フリースタイル部門 最終結果(Women’s Freestyle)】
1位:クラウディア・レオン(スペイン)— 24.87 pts
2位:ミカイリ・ソル(ブラジル)— 24.13 pts
3位:リタ・アルナウス(スペイン)— 20.97 pts
4位:ブルーナ・カジヤ(ブラジル)— 18.10 pts
【特別エキシビション:ビッグエア部門 結果(Big Air Special Event)】
・男子:1位ヴァレンティン・ガラット(フランス) / 2位ポシート・マルティネス(ドミニカ共和国) / 3位ハムザ・ナッサル(エジプト)
・女子:1位ナタリー・ランブレヒト(スウェーデン) / 2位カーリー・トーマ(アメリカ・ハワイ) / 3位アレハンドラ・トレス(スペイン) / 4位ネス・バルビノ(イタリア)
🔗 関連リンク: Qatar Airways GKA Freestyle-Kite World Cup Neom 19-23rd October – GKA Kite World Tour
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